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米中対立はなぜ「文明の衝突」なのか

Japan In-depth / 2023年8月3日 11時0分

ピルズベリー氏は米中文明衝突論にからむ微妙な要素としての人種の違いについて以下のようなエピソードをつけ加えた。


 「トランプ政権で国務省の政策企画局長という要職に民間の学界から登用されたカイロン・スキナーという優秀な国際政治学者がいた。黒人女性のスキナー氏が2018年9月にメディアとのインタビューで米中対立について『アメリカとして初めて白人ではない大国と一対一の対決をするにいたった』と述べた。中国人は人種だけでなく世界観、社会観、歴史観などでアメリカとは違う、つまり文明が異なるのだ、という趣旨の発言だった」


「この発言が当時のマイク・ポンぺオ国務長官らの不興を買った。『白人ではない』という表現が人種差別につながりうるという反発だった。結局、スキナー氏は辞職させられた。いわば真実を語った学者をポンぺオ長官らがなぜ除去したか。それには中国への警戒の構えを全米的にとらせるには、共産主義との闘いにすることが容易だという要因があったのだ」


 


 いまの米中対立、ことにアメリカ側の中国への反発にはこんな微妙で複雑な要素も含まれている、ということなのである。


 


 しかしそれにしても、いまになってアメリカ側でなぜ中国との文明の衝突が対中認識の総括として提起されるようになったのか。


 まず考えられるのは米側の中国への認識がそこまで深くなり、中国をよく知ったからこそ自国、そして自国民との違いをこれまで以上に巨大にとらえるようになったから、といえるだろう。アメリカと中国との間は対立というよりは断層と呼べる深い溝があるという受け止め方ともいえよう。


 


 この認識がごく客観的にみて、果たして正しいか、否か。断定はできないだろう。だがそうした認識がアメリカ側の中国に対する反発や対決の姿勢をこれまで以上に強めていく、という見通しは確実だといえよう。


*この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトの古森義久氏の寄稿の転載です。


トップ写真:世界規模の脅威に関する上院情報委員会の公聴会で、委員長のマーク・ワーナー上院議員 (民主党-バージニア州) が有力議員マルコ・ルビオ上院議員 (右:共和党-フロリダ州) の証人尋問を聞く。 2023 年 3 月 8 日 米・ワシントン DC


出典:Photo by Drew Angerer/Getty Images


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