習近平政権を悩ます2つの大事件
Japan In-depth / 2023年8月6日 7時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・2つの大事件が習近平主席を悩ませる。
・秦剛外相の失脚は、習主席が人を見抜く能力に欠けると世界に晒した。
・人民解放軍開催の党建設会議の主席の不在は、軍部で何かが起こっていることを示唆。
現在、第3期目の習近平政権に2つの大事件が起こり、習主席を悩ませている。
第1に、秦剛外相である。今年(2023年)6月25日以来、秦剛がしばらく公の場所に姿を現さなかった。そのため、翌7月10日前後から、秦剛の身に何か起きているのではないかとの憶測を呼んだ。
その理由として、①香港「フェニックステレビ」のキャスター、傅暁田とのスキャンダル、②王毅との権力闘争、③「人民解放軍ロケット軍機密情報漏洩事件」(後述)への関与疑惑等が取り沙汰されたのである。
結局、7月25日、秦剛外相が、電撃的に解任(a)された。そして、前外相の王毅・党中央外事工作委員会弁公室主任(外交トップ)が再び外相に返り咲いている。ただ、秦剛の失脚理由について、“秘密主義”の共産党から未だに説明がない。
秦剛は習主席によって登用された人物であり、秦の失脚は主席が人を見抜く能力に欠けることを世界に晒したかもしれない。その結果、中国共産党の国際的イメージと主席の威信に大きな打撃を与えたという評価が少なくない。
大多数のトップリーダーが習主席の側近である。それゆえ、政策や人事で失敗した場合、主席が責任を他に転嫁する余地はほとんどないだろう。このような状況下では、党の他派閥が主席に圧力をかけるチャンスかもしれない。
第2に、人民解放軍である。
7月20日から21日にかけて、解放軍は習主席の指示を受け、北京で党建設に関する会議を開催(b)した。
主席自身もこの重要な軍部の会議に出席する予定だったが、姿を見せなかった。主席の指示として、党と軍はあらゆる面で厳格な統治を引き続き推進し、党の軍に対する絶対的な指導の堅持などを強調した。
これは、前回、習主席が東部作戦地域訪問の際と同じで、軍部で何かが起こっていることを示唆している。
同会議では、党中央軍事委員会副主席の何衛東が演説し、同委員会委員の劉振立、苗華、張昇民が出席した。
前2回の会議には同軍事委員会の副主席2人が出席していたが、今回の会議には張又侠副主席が欠席し、国防相の李尚福も出席しなかった。
張又侠は、政治工作を総括する軍事委副主席である。それにもかかわらず、党建設工作会議に出席しなかったのはなぜか。たぶん、“不正常な状況”下で混乱を収拾しようとしている公算が大きい。ただし、張又侠については色々な噂があり、一時、2ヶ月以上も姿を見せなかった。だが、その間、6月下旬に行われた大将への昇進式に一度だけ姿を現している。
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