マニラ湾埋め立て事業の中国企業 ブラックリスト企業と米が懸念
Japan In-depth / 2023年8月12日 17時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・マニラ湾埋め立て参加の中国企業、米がブラックリストに掲載。
・埋め立て予定海域は米大使館敷地やフィリピン海軍本部の沖合。
・「脱中国、親米」の現政権は契約見直し含む断固たる対応求められる。
フィリピンの首都マニラの西に広がるマニラ湾で現在、開発のための埋め立て工事が進もうとしているが、主体となっている合弁事業会社が契約した企業の中国企業に対して米政府が環境問題と安全保障問題さらに地域社会へのリスクという観点から懸念を表明する事態になっていることが明らかになった。
在マニラ米大使館の指摘ではこの埋め立てプロジェクトに関係する中国企業が米商務省のブラックリストに載る企業(2020年に登録)でもあり、世界銀行やアジア開発銀行からも「詐欺的商慣行に従事している」とされていることなどからフィリピン政府に同プロジェクトへの中国企業の参加中止を検討するように求めているという。
地元紙などが8月2日に報じたところによると、米大使館のスポークスマンはマニラ湾で計画中の総面積318平方キロメートルに及ぶ埋め立てプロジェクトに中国通信建設会社(CCCC)の関連会社が関与していると指摘。
この会社は中国とフィリピンの間で領有権争いが生じている南シナ海で中国政府により進められている人口島の建設、軍事基地化にも重要な枠割を果たしているという。
★環境、安全保障の面からの懸念
総額34億ペソ(約88億円)という巨額のプロジェクトはマニラ市当局と「ウォーターフロント・マニラ・プレミア開発」による合弁事業で、合弁企業の一つとCCCC関連会社の中国企業との間で「埋め立て作業実施」の契約が結ばれていることが報じられた。
この埋め立て予定海域はマニラ湾に面した米大使館の敷地やフィリピン海軍本部の沖合にあたり、安全保障の面からも懸念があると米大使館関係者は指摘している。
海軍本部はプロジェクトに対して本部からマニラ湾への200メートルのアクセス水路を確保するように要求しているという。
さらに環境の観点からも、この埋め立てプロジェクトにより「潜在的、長期的かつ不可逆的な悪影響を含む重大な懸念がある」と米側がフィリピン政府に伝えていることも明らかになった。
このほかにフィリピンの環境保護団体も、マニラ市の人口密集地域での洪水被害をさらに悪化させる可能性があるとして埋め立てプロジェクトに対して反対を表明していることも明らかになった。
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