鮮明化した中国経済の低迷
Japan In-depth / 2023年8月14日 7時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国、7月の輸出前年同月比14.5%減少、7月の輸入前年同月比で12.4%減少。
・不動産市場長期悪化、輸出需要減少、消費支出低迷等が景気浮揚妨げている。
・1990年代に日本経済を悩ませた「流動性の罠」が発生する恐れ。
2020年6月1日、李克強前首相が山東省を視察した際、「屋台経済」を称賛した(a)。だが、すぐに、それを習近平主席に否定された(b)。その後、中国経済復活の契機がほぼ完全に失われた観がある。
今年(2023年)に入り、中国の景気が更に後退していると本サイトでもしばしば指摘してきた。だが、ここに来て、一般のエコノミストもようやく中国経済の停滞を認め始めたようである。
第1に、7月の輸出(2818億米ドル)が前年同月比14.5%減少(c)した。前6月の12.4%よりさらに悪化した。
他方、7月の輸入(2012億米ドル)は前年同月比で12.4%減少し、ロシアからの輸入でさえも、2021年2月以来初めて前年同月比でマイナスとなった。
そのため、中国を産業資材、食品、消費財の最大市場の一つと見なす世界の輸出業者にとって打撃となっている。
結局、7月の貿易黒字は20.4%急落し、806億米ドルにとどまった。
第2に、7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.3で、好不況の節目の50を下回った。4月から6月までのPMIはそれぞれ49.2、48.8、49.0と4か月連続で縮小し続けている。
一方、中国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同期比0.3%下落し、2021年2月以降初めて下落(d)した。注目すべきは、7月のCPIとPPIが共に前年同月比マイナスとなったのは2020年11月以来である。
つまり、中国経済はデフレに陥っていて、(1)不動産市場の長期悪化、(2)輸出需要の大幅な減少、(3)消費支出の低迷、等が景気浮揚を妨げている。
第3に、今年6月末までに、中国への海外投資は、生産高の約0.4%まで減少(c)した。コロナ発生前の5年間の平均1.6%と比較すると激減している。25年前に記録を取って以来、最低レベルになった。
以上の結果、投資者らは、軟調な輸出入データ等を見て世界2位の経済大国の景気回復見通しへの懸念を増幅させた。そのため、人民元の為替レートと(上海市場と深圳市場で海外個人投資家が自由に投資できない中国人向け)A株、香港株が相次いで影響を受けている。
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