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鮮明化した中国経済の低迷

Japan In-depth / 2023年8月14日 7時0分

実は、目下、中国の消費者と企業は長期定期預金ブームの真っただ中(e)にあるという。





最新のデータによると、中国の金融機関は、今年第1四半期に5.5兆元(約110兆円)の3年定期預金を発行したが、2015年に同商品が発売されて以降、単一四半期としては最高を記録した。





これは大量の資金がほとんど流通しないという事である。1990年代に日本経済を悩ませた「流動性の罠」(金融緩和により金利が一定水準以下<例えばゼロ金利>に低下した場合、伝統的金融政策が効力を失う)と同じ事態が発生する恐れがあるだろう。





「流動性選好説」によると、投資で儲けが期待できない時に、人は現金を好む傾向を持つ。そのため、金融緩和政策の下、貨幣供給を増大させても、人々は金銭を蓄えるので、景気刺激策にならない。





現在、中国当局が経済状況を好転させるために金利を引き下げ、銀行に貸し出しを増やすよう促している。けれども、この1年で、中国個人投資家は不動産や株式市場から撤退し、長期定期預金に殺到した。また、今年に入ってから企業も加わり、景気の足を引っ張っている。





つまり企業や個人が投資するよりも、(割と流動性の高い定期預金で)貨幣を貯蓄していることを意味する。





実際、180社のA株上場企業が、今年定期預金に投資(というよりも貯蓄)したと申告している。ある中国国有銀行の行員は、定期預金への需要が例年より高いことを認めた。





現在、中国の家庭や企業は定期預金やその他の安全な金融商品へ流れている。これでは、当局が減税や不動産支援策を通じて需要や消費を喚起しようとする政策の効果を損なう公算が大きい。





北京を拠点とする政府系シンクタンク「国家金融発展研究室」が発表した報告書によれば、家計債務の対GDP比率(レバレッジ比率)は、2022年末の61.9%から第2四半期には63.5%に上昇した。以前、国際通貨基金(IMF)が金融リスク警告を発したレッドラインの65%に近づいた。2008年末時点で中国の家計債務のレバレッジ比率は17.9%に過ぎなかったのである。





国際決済銀行(BIS)は、中国の家計負債は2022年末までに10兆7600億ドル(GDP比61.3%)に達したと予測している。この比率は、2022年末時点ですでにドイツとインドを上回っており、米国の74.4%、日本の68.2%に接近している。





 





〔注〕





(a)『中華人民共和国中央人民政府』「李克強が屋台経済、小規模店舗経済を称賛:それは世界の花火、中国の活力だ」(2020年6月1日付)





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