日大アメフト不祥事記者会見の評価
Japan In-depth / 2023年8月14日 11時0分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・林理事長は自身のネガティブなイメージを立て直すことが出来なかった。
・大学も、隠蔽疑惑などを払拭することは出来なかった。
・「目的の明確化」、「分からないことは言わない」などの鉄則を守っていなかった。
日大アメフト部違法薬物事件の記者会見が8月8日に行われた。筆者も中継で見ていたが、危機管理の観点からいくつか感じたことがある。
まず、不祥事の記者会見というものには鉄則がある。1つ目は、何のために会見を開くか、その「目的を明確にしておくこと」だ。
2つ目は、出席者の間で「平仄を合わせておく」ことだ。人によって違う事を言うと、記者の追求を招き、会見が泥沼化する。
3つ目は、「分からない(不確かな)ことは言わない」、ということだ。その時点で明確でないことを憶測で言ってはならない。事実関係で齟齬が生じ、後から嘘をついたことになることは避けねばならない。
1つ目の「目的の明確化」だが、今回の会見は、林真理子理事長と大学側とそれぞれに目的があったと思う。
林理事長は、本不祥事に関して「『蚊帳の外』でたんなる『お飾り』にすぎない」、との批判を払拭することが目的だった。大学としては、「不祥事を隠蔽しようとしたとの批判をかわすこと」が目的だった。
結論からいえば、林理事長はこの目的を完遂できなかった。「お飾りとの批判は大変残念」などと繰り返したが、世間が聞きたいのは、「お飾りという批判は当たらない、その理由」であった。本件に関し、自分はどう行動し、どのような結果を導き出したかを語らないことには、お飾り批判は払拭できないのは明白だ。それどころか、大学側の判断は正しかった、と言い切った時点で、大学擁護の立場を鮮明にしてしまった。大学と一体となったことで、自身のネガティブなイメージを立て直す機会を失ったと言えよう。
大学はどうか?検事出身の澤田康広副学長に任せっきりで、酒井健夫学長の出番がほとんどなかったのはともかく、澤田氏はとにかく良くしゃべった。大学の対応は正当であり、隠蔽などはなかったという主張を繰り返した。しかし、その目的は達成されなかった。
澤田氏は警察関係者に相談したというエピソードを披露したが、後に警視庁幹部に「日大出身の警察官への個人的なもので、立証困難との見解は伝えていない」と事実関係を否定されてしまった。それ以外にも、大麻と思われるものを吸った一人の部員から申告があった、としたものが、後に複数の部員が関与していたとの疑惑が浮上した。会見で話した内容が不確かなものであり、後で事実関係が否定されることは最悪で、不祥事会見では絶対避けねばならないことである。一連のこうした不備をみると、会見の目的がちゃんと話し合われていたのか、疑問に思う。
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