「高岡発ニッポン再興」その96 番外編 戦争を考える③ ポツダム宣言受け入れの条件は
Japan In-depth / 2023年8月17日 7時0分
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・最高戦争指導会議、「国体護持」の条件を巡り、議論紛糾。
・鈴木総理、軍事内閣が組閣される可能性があるので「内閣総辞職」を拒否。
・阿南陸軍大臣、徹底抗戦を訴えたものの総辞職には同調せず。
それにしても、昭和20年8月9日というのは、日本のその後を左右する重大な一日でした。書記官長の迫水常久は9日午前11時から宮中で最高戦争指導会議を招集しました。会議のメンバーは6人だけです。
貫太郎は冒頭にこう言います。
「広島の原爆といいソ連の参戦といい、これ以上の戦争継続は不可能であると思います。ポツダム宣言を受諾し、戦争を終結させるほかはない。ついては各員の御意見をうけたまわりたい」。
重苦しい雰囲気で会議は始まりましたが、ポツダム宣言を受け入れる場合、どのような条件を添えるのか、まとまりません。会議の最中に、長崎に原爆が落とされました。
米内光政海軍大臣や東郷茂徳外務大臣は「天皇の国体上の地位を変更しないことだけを条件として、ポツダム宣言を受け入れるべきだ」と主張した。これが一つの条件だけ主張するグループです。
一方、阿南惟幾陸軍大臣、梅津美治郎参謀総長、豊田副武軍令部総長は、この条件以外にも、3つの条件をつけるべきだと訴えました。その3条件とは①占領は小範囲で本土を含めないこと②海外にいる日本兵は降伏や武装解除の処置を取らず、自主的に徹底し、復員すること③武装解除と戦犯処置は日本人の手に任せるべきだというものです。都合4つの条件が国体を守るため不可欠だというのです。
最高戦争指導会議は議論が紛糾し、結論が出なかった。一旦休憩となりました。その後、閣議が2時半から開かれました。3時間議論しましたが、ポツダム宣言を受諾すべきかどうか、閣僚の間で意見はまとまらず、閣議はいったん休憩しました。午後6時半から再開し、10時まで開かれました。
阿南陸相は「死中に活を求める戦法に出れば、完敗を喫するようなことはなく、むしろ戦局を好転させ得る公算もあり得る」と力説したが、米内海軍大臣は、率直に挽回の見込みないと断言しました。ほかの閣僚もそれぞれ意見を表明したが、いずれも極めて悲観的結論でした。
貫太郎は閣議の間、各大臣の発言を黙って聞いていたが、一度だけ言葉を発しました。それは、太田耕造文部大臣が「対ソ連交渉が失敗したのと、閣内の意見がかくも不一致な以上、内閣は総辞職すべきでないでしょうか」と主張した時のことです。貫太郎は「内閣総辞職については全く考えていません」と言い切ったのです。
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