インドネシア大統領選、年齢制限見直しの動き 背景に政治的思惑
Japan In-depth / 2023年8月19日 7時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・インドネシア大統領選で、正副大統領立候補者の年齢制限変更の動き。
・40歳以上の年齢制限を35歳以上と5歳も若返らせるというもの。
・ジョコ大統領、35歳の長男を副大統領候補にしたいとの思惑か。
2024年2月に行われるインドネシアの大統領選に向けて立候補予定者を巡る各政党間の合従連衡が活発になる中、不思議な動きが今インドネシアで起きている。それは正副大統領立候補者の年齢制限を変更しようというもので、これまでの過去の大統領選では議論されてこなかった問題が急浮上しているのだ。
具体的には現在正副大統領に立候補するための年齢制限は40歳以上だが、これを35歳以上と5歳も若返らせるというもので、複数の政党が提案し、現在その変更案が果たして妥当なものかどうかが憲法裁判所で審理されているのだ。
複数の政党によるこの提案に表立って異論を唱える声が国会で出てこなかった背景には、ある特定の人物に大統領選立候補への道を開きたいという半ばコンセンサスのような暗黙の了解があったためといわれている。
その人物を副大統領候補として擁立したいという有力な大統領立候補予定者らの思惑が背景にあり、11月25日に締め切られる正副大統領立候補者の届け出締め切りに向けて今後虚々実々の駆け引きが表面化することは不可避で、大統領選はますますヒートアップしようとしている。
★年齢制限変更は大統領の長男のためか
その渦中の人物はギブラン・ラカブミン・ラカ氏で、現在中部ジャワ州ソロ(スラカルタ)の市長を務めている。そしてギブラン氏は現職のジョコ・ウィドド大統領の長男でもあり、現在の年齢が35歳なのだ。
憲法の3選禁止で次期大統領選に立候補できないジョコ・ウィドド大統領は大統領退任後に関しては故郷ソロに戻って家族と一緒に悠々自適の生活送りたいとこれまでも度々表明してきたが、憲法を改正して3選を可能にしようという動きがかつて出たほど国民の支持と信頼は高く、大統領自身は引退後もなんらかの影響力を政界に残したいとの野心を抱くに至ったといわれている。
このため自身の「後継者」として長男ギブラン市長を次期大統領選でいずれかの大統領候補者とペアを組む副大統領候補としたい、と考え始めたというのだ。
その大統領の意向を汲んだ複数の政党が「年齢制限引き下げ」を提案したという経緯が今回の背景にあるのだ。
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