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世界最悪の大気汚染 ジャカルタ 健康被害深刻 政府有効対策なし

Japan In-depth / 2023年8月23日 12時8分

こうした地球的な気候条件も加わってジャカルタの大気汚染は日々深刻化しているが、政府の環境林業省は「報道されているほど深刻ではない」との見解を示し、世界最悪というレッテルに抵抗を示している。


同省担当者によるとジャカルタ中心部には高層ビルが林立しており、これが大気や風の通り抜けを阻碍して滞留するという「ストリート・キャニオン現象」が主な原因であると指摘しているが、市民からは「責任回避」と批判を浴びる結果となっている。


環境保護団体「ワルヒ」は政府が大気汚染対策の一つとして挙げている電気自動車(EV)の利用促進に関して「EVのリチウムイオン電池に不可欠なニッケルの採掘現場の環境問題」に対するジョコ・ウィドド大統領の危機感欠如を厳しく批判し、大気汚染問題への意識も希薄であると指摘している。


 


★住民訴訟で政府敗訴の過去生かされず


ジャカルタの大気汚染は2023年に限ったことではなく以前からその被害が指摘されていた。2019年には「大気汚染に対する不十分な対策で市民が清浄な空気を吸う権利が侵害されている」と市民32人がジョコ・ウィドド大統領、政府閣僚、州政府を相手取って訴訟を起こした。


ジャカルタの裁判所はこれに対し「大気汚染を防止し、対策を講じるということを怠り、放置した責任がある」と市民側勝訴の判決を下したのだった。


政府は控訴を検討したものの当時のジャカルタ州のアニス・バスウェダン知事が「判決に従う」として行政側の責任を認め、以後大気汚染は行政にとって最大の課題の一つとなったはずだった。


しかしその後、知事の交代もあり有効な対策が講じられることなく、ついに世界最悪の大気汚染都市としての汚名を冠される状況となったのだ。


 


★大統領、議員の関心は大統領選


報道を受けて大気汚染は今ジャカルタで最もホットな話題となっているが、ジョコ・ウィドド大統領や政権にとっては2024年2月に迫っている大統領選挙に関心が移っていることは否めない事実だ。


政府が打ち出した「在宅ワーク推奨」も雇用者団体からは「生産効率が落ちる」として反対されており、公共交通機関の利用義務付けも違反者の発見、罰則などが不透明であることもありその実効性には大きな疑問が投げかけられている。


目の前の喫緊の「大気汚染問題」より来年の大統領選挙が政治家、国会議員の最大の関心事となっていることがジャカルタ市民の悲劇となっているのだ。


トップ写真:ジャカルタの街並み(2022年12月4日撮影)


出典:Photo by Kaveh Kazemi/Getty Images


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