金正恩、失政に抗議する住民に弾圧組織新設
Japan In-depth / 2023年8月29日 7時0分
そして、各市、郡にある「3課連合指揮部」支部責任者は、中央党組織指導部党生活指導課から派遣された指導員たち」だとし「その他、社会安全省と保衛省、青年同盟と女性同盟党委員会から派遣された幹部たちで人員が構成されていると消息筋は強調した。
金正恩は、こうした「金正恩の命令と指示に従わない人たち」を摘発する組織を立ち上げる一方で、今年のはじめには、急増する犯罪との「戦争宣言」を行い、抵抗する者には、即銃殺するよう指示した。
■危機回避のために金徳訓総理らをスケープゴートに
金正恩の失政に対する抗議の表明は、1990年代の苦難の行軍時を彷彿とさせるが、経済苦と餓死者増加の中で、このところ頻繁に起こっているという。特に1990年代を経験した「チャンマダン(市場)世代」の抵抗が激しく、金正恩は、自身の権威維持のために、失政の責任転嫁を行わなければならない状況にまで追い詰められている。
こうした中で、金正恩は8月21日、北朝鮮西部の南浦(ナムポ)の干拓地で堤防が決壊した地域を視察し、「自然災害ではなく人災だ」と激怒して金徳訓(キム・ドクフン)総理ら幹部と関係部署を厳しく叱責した。
朝鮮中央通信によると、堤防の排水設備工事が適切でなかったために海水の影響で堤防が決壊し、水田を含む約560ヘクタールが冠水したとのことだ。金正恩は、ずさんな工事を内閣が把握しなかった点を「規律が甚だしく乱れている」と口汚く罵り、金徳訓総理と関連部署の幹部を猛烈に批判した。そして法的・党的責任を厳しく追求するとした。
総理の金徳訓は、形式上、党中央政治局常務委員で、金正恩を除くと序列1位であるが、実質的権限は殆どない案山子同然の人物である。このような人物に責任追及しても問題が解決しないことは、金正恩自身が一番良く知っているはずだが、自身への批判をそらそうとして、責任転嫁の生贄として彼に白羽の矢を立てたのである。こうした手法は北朝鮮金氏王朝3代政権の常套的危機回避手法といえる。
韓国メディアは、金正恩の言動について、食糧難への住民の不満の矛先を金徳訓総理らに向ける思惑があるとの見方を示したが、まさにその通りと言える。
■責任転嫁は、金氏3代王朝の常套的危機回避手法
北朝鮮では、体制危機が深まり、最高指導者に対する住民の批判が露骨になるたびに、経済担当などの中枢幹部に罪を被せ、彼らを処刑・粛清することで、最高指導者の権威を維持してきた。
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