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地震より怖いものがある 日本と世界の夏休み 最終回     

Japan In-depth / 2023年9月1日 11時0分

 上野広小路など、防火を念頭に置いたインフラ整備にも取り組んだが、限定的なものにとどまり、全体としては従前の、つまり木造家屋が密集した町並みを元通りにすることが、すなわち復興だと思われていた。


 この結果、1945(昭和20)年3月10日、米軍による大規模や艦爆撃=世に言う東京大空襲で、またしても火災による死者だけで11万5000人以上と、関東大震災をも上回る犠牲を出すこととなってしまったのである。


 さて、本題。


 前置きがいくらなんでも長過ぎないか、と言われそうだが、ここまで述べてきたような基礎的なデータは、今や検索することで簡単に得られるし、地震への備えについては、政府や各自治体がさかんに広報している。ただ、なにごとを論じるに際しても、やはり基礎知識は持ってもっていただかないと話が進まないので、必要最小限のデータだけは列挙させていただいた。


 本稿で問題にしたいのは、震災後に流布された数々のデマと、そのデマを原因とする事件である。


 大正時代の日本にあっては、ラジオすら満足に普及しておらず、メディアと言えば新聞だけであった。この震災により、読売新聞や東京朝日新聞は本社社屋が焼失し、一時的に新聞発行が不可能となり、唯一残った東京日日新聞(毎日新聞の前身)は2日付の紙面で「東京全市火の海と化す」「死者十数万」といったセンセーショナルな見出しを掲げた。


 これ自体はもちろんデマではないのだが、震災後のパニック状態に近い群集心理を増幅させる効果をもたらしたことは間違いない。


 様々な流言飛語が飛び交ったとされるが、中でも「朝鮮人があちこちで放火・略奪を繰り返している」「井戸に毒を投げ込んだ」というデマは、深刻な被害をもたらした。


 各地で軍隊や警察の肝煎りによる(!)自警団が組織され、軍から提供された銃剣などで武装した(!)民衆が「朝鮮人狩り」に乗り出したのである。この結果、なんの罪もない人が6000人以上も虐殺されるという事態が生じてしまった。


 どうやって朝鮮人を見分けたのかと言うと、これがまたひどい話で、朝鮮語では濁音が一般的でないことから、怪しいと見なした者に「十五円五十銭」と言うことを強要し、うまく言えなければリンチ、という有様だったのだ。言語障害のある日本人や、訛りのきつい地方出身者までが被害に遭ったケースも報告されている。


 現代を生きる日本人として考えても痛恨の極みであるが、前述の阪神淡路大震災に際しては、こうした問題は生じなかった。


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