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地震より怖いものがある 日本と世界の夏休み 最終回     

Japan In-depth / 2023年9月1日 11時0分

 被害の大きかった神戸市長田区は、在日コリアンが多く暮らす街としても知られていたのだが、当地の民族学校では震災後、避難所や給水所に施設を提供した他、地元住民と協力して炊き出しを行うなどした。1988年ソウル五輪のテーマソングを歌うなど、当時は日本でも人気を博していた韓国人歌手のキム・ヨンジャが、軽トラックの荷台を即席のステージとして、市内各地で慰問ライブを行ったりもしている。


 東日本大震災に際しては、一時的に「中国人窃盗団が多数、被災地に潜入している」「警察官が刺される事件が起きた」という噂が流布したが。当該地域の県警が即座にこれを否定した。


 やはり日本社会は成熟してきているのか、と考えていたのだが、2年ほど前に、右翼と称する男があるネットメディアに登場して話した内容を聞いて、唖然とさせられた。


 大震災に際して、車(街宣車か?)数台に救援物資を積み込んで被災地に届け、感謝状をもらったと得々として語るのだが、同時に、実は鉄パイプを持った「自警団」を送り込んでいたという。


「中国人が、ご遺体を切り刻んで貴金属を奪っている、という情報が入ったから」


 だそうで、深夜の被災地に繰り出して、通行人(いるとでも思ってたのか?)に「どこへ行かれるのですか?」「地元の方ですか?」などと声がけをして、相手が中国語を話したりしたら「やってしまえ」と命じてあったとか。鉄パイプで殴り殺そうが「(死体は)がれきの下に放り込んでおけばよい」との申し合わせもしたという。


「まあ、誰もいなかったけどね」とのことだったが、自分がなにを言っているか、おそらく自分で分かっていないのだろう。鉄パイプを揃えて被災地に乗り込んだ時点で、感謝状どころか凶器準備集合罪に問われて然るべき案件ではないか。


 日本人が成熟したとか劣化したとかいうことではなく、いつでもどこでも、一部のバカのせいで全体が迷惑する。それだけの話なのだ。


 今さらこのようなことは、書いている方が恥ずかしいが、動機となった「情報」に真実性がないのであり、この「右翼」がやろうとしたことは「迷惑系」よりたちが悪い。仮に、本当に窃盗犯と出くわしたとしても、警察に突き出す以外の行動は許されていない。


 そもそもデマを流した者が悪い、との反論もあり得よう。そうした面は確かにあると私も考える。だからこそ、フェイクニュースや「迷惑系」に対する厳罰化が急務であると、あらためて訴えたい。


 この先もまた、かなりの確率で、具体的には今後30年以内に首都直下型地震が起きる確率は70%以上であるという。この話が流布してから10年は優に経つので、ますます確率は高くなっているのだろうか。


 震災への備えと同時に、主にネットを介して広まることが危惧されるフェイク(=デマ)情報についても、抑止策を考えておかねばならないだろう。


トップ写真:関東地震後の火災で被害を受けた深川方面永代橋周辺(1923年 東京)


出典:Hulton Archive/Getty Images


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