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アメリカ不法入国者の増加の新記録

Japan In-depth / 2023年9月11日 12時0分

 その後、バイデン政権は各方面からの抗議に押される形で2022年末から23年にかけて国境での警備の強化や不法入国者の国外送還の増加などの措置をとった。その結果、不法入国の流れのいくらかの低下もみられた。


 ところが23年夏になり、また不法入国者の数が増えてきた。ワシントン・ポストがバイデン政権の関係部局から得た情報として9月1日付で掲載した「不法入国者の逮捕が記録破り」という見出しの長文の記事がその現状を詳しく伝えていた。この記事の骨子は以下のようだった。


 ・8月中にアメリカ政府当局に拘束された不法入国者のうち親子、夫婦など家族の形をとる人間の数が9万1000人に達し、これまでの最高を記録した。これまでの不法入国家族拘束の1ヵ月最多は8万4000人だった。


 ・8月中にアメリカ側が拘束した不法入国者の総数は17万7000人と、これまた最高記録となった。今年6月は9万9000人、同7月は13万2000人だった。1ヵ月間に4万以上の急増となった。


 ・不法、合法を含めての8月のアメリカへのメキシコ国境からの長期滞在希望の入国者は合計23万人を記録した。この数字は2023年に入っての最高となった。それ以前にこの数字以上の入国者があったかどうかは確定できない。


 ・バイデン政権が2021年に登場して以来、メキシコ国境からアメリカ側に入った不法入国者の総数は少なくとも700万人と推定される。正確な数は移民関税局などが公式の発表をしていない部分が多く、把握できない。


 以上のようなワシントン・ポストの報道を受ける形で民間の移民難民問題の研究機関「移民研究センター」のマーク・クリコリアン所長は「バイデン政権の非現実的な入国管理政策がこうした記録破りの不法入国という大混乱を生んだのだ」として、最近の不法入国者には家族とは別の単独の未成年も急増している、と指摘した。未成年者の不法入国の場合、強制送還が寛容となり、その未成年者の家族が後から「人道上の理由」でアメリカへの入国が認められる場合が多いのだという。さらにその不法入国のメカニズムの背後には入国希望者から高額の報酬を得て、違法入国をアレンジする犯罪組織の存在も顕著だと、クリコリアン所長は強調した。


 この不法入国者増加の現象は共和党側でも連邦議会の下院や大統領予備選の候補たちがバイデン政権の政策の失敗として糾弾している。共和党側は最近の不法入国者には中国籍やロシア籍などの男女も増えてきた点を重視して、国家安全保障上の懸念をも強調する。とくに8月下旬に開かれた初の共和党予備選候補たちの討論会でも8人の参加者すべてがこの不法入国者問題を取り上げ、民主党への攻撃材料としたことが顕著だった。


 こうした経緯からこれから本格化する次回の大統領選挙戦でも、この不法入国者問題についての議論が熱を帯びることは確実となってきた。


 *この記事は日本戦略研究フォーラムのサイト掲載の古森義久氏の寄稿の転載です。


トップ写真:米国とメキシコの国境の壁の間にある仮設キャンプで立ち往生する移民たち。 2023年5月13日 カリフォルニア州サンディエゴ - 5月13日:


出典:Photo by Mario Tama/Getty Images


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