矛盾甚だしいロシア経済協力担当相の存続
Japan In-depth / 2023年9月16日 11時0分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・岸田改造内閣で、ロシア経済分野協力担当相ポストの存続が決まった。
・プーチン政権によるウクライナ侵略以来、日本は制裁を発動、北方領土交渉を含め日露関係は険悪な状況。
・制裁と経済協力は両立しない。何のために担当相を置いておくのか。岸田首相はスジの通った説明をすべき。
疑問や驚きは人事につきものだが、これもそのひとつだ。
9月13日の内閣改造で、ロシア経済分野協力担当相ポストの存続が、再び決まった。制裁を科している相手国との協力を推進するポストを維持するというのは、矛盾甚だしいというほかはない。
■「撤退企業支援のための存続」
ロシア経済分野協力相は、留任した西村経産相が改造前と同様、兼任する。
13日夜、改造内閣初閣議後の記者会見で松野官房長官は、こう説明した。
「日露の経済協力は当面見合わせているが協力プランに参加した日本企業の撤退などに対応する観点から西村氏がひきつづき兼務することとなった」「ロシアには毅然として対応していくが、漁業など隣国として対処する必要のある事項は、国益に資する観点から適切に対応していく」「北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針を堅持する」―。
かいつまんでいえば、ロシアとの経済協力を推進するためにポストを設置したものの、ウクライナ侵略によって頓挫したため、撤退企業の支援へと業務内容を180度転換するということだろう。
■ ウクライナ侵略直後から廃止論
ロシア経済分野協力相ポストの設置は、2016年5月に安倍首相(当時)がプーチン大統領に提示した産業振興やエネルギー開発など8項目の経済協力構想を具体化することが狙いだった。同年9月の設置当初から経産相が兼任、菅、岸田内閣でも引き継がれ、2022年2月のウクライナ侵略以後も継続されている。
経産省によると、担当相ポスト設置以来、経済協力に参加、または参入を希望する日本企業に情報提供など側面支援を行い協力を推進してきた。
しかし、ロシアの侵略によって状況が大きく変化した。
侵攻開始翌月の衆院予算委で岸田首相が、「ロシアとの経済協力は当面見合わせることを基本とする」と明らかにし、構想は中断した。
担当相ポストを廃止すべきだとの指摘は当然ながら当初から少なくなかった。ウクライナ侵略翌日の2月25日の参院予算委員会で、伊東孝恵議員(国民)が、その旨質問した。
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