権力者をなぜ抑制できなかった?~ジャニーズ問題はメディア問題【日本経済をターンアラウンドする!】その14
Japan In-depth / 2023年9月20日 19時0分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・テレビ局など大手企業は、圧倒的な権力を持つジャニー氏を批判できなかった。
・メディアは、意思決定過程を検証するべき。
・ジャニーズ問題はメディア問題であり、日本社会の組織の問題と言える。
権力者の抑制。
ジャニーさんの問題で明らかになったのは、権力者が問題を起こしても、それを抑制するどころか黙認してしまった、不正を正せないという、日本社会のある部分のシステムの仕組みである。メディア業界に限定するだけでなく、広告を出す企業や行政も「わかっていた」事実をもとにすると、芸能界という特殊な世界の出来事というのは正しくはない。日本社会に共通する問題がそこにはあると思う。
裁判で事実認定されていたこと、北公次さんをはじめとするたくさんの暴露本などを読み、もしくは噂を聞き、知っていた人たちはいた。しかし、巨大権力に対して、疑問を呈する選択はとれなかったわけだ。それどころか、公共性が求められるニュース番組のキャスターにまで、ジャニーズタレントを就任させ、社会に対して問題提起をさせていた。
60年にもわたる性被害を報道すらできなかったことに対して、彼ら・彼女らを批判するわけではないが、なぜできなかったのかを考えてみる必要はあるだろう。
□「空気の支配」
大手企業は会社とお付き合いするときに、いろいろなチェックをする。ジャニーズ事務所との契約であるが、そもそもジュニアとの契約も契約書を交わしてこなかったし、監査役が置かれているが業務監査権限は有していなかったし、内部通報制度もない。コンプライアンス規程など基本的な社内規程も制定されていなかったし、そもそもコンプライアンスを専門に担当する部署は存在しなかった会社である。そんな会社と付き合いができたのは、ひいてはその抱えるタレント数、育成システム、実績面での圧倒的なプレゼンスである。
特にテレビ局。芸能界で多くのジャニーズタレントが活躍、そんな中、ジャニーズタレントを使わないという選択肢を提案するのは難しい。提案したとしても、上司には却下されるだろう。キャスティングにおいて、ジャニーズのタレントがいないことでの魅力低下が相当に進んでしまい、結果として、自分の担当する番組の視聴率が落ちる。自分たちの評価の低下につながるからだ。
ジャニーズのタレントに疑問を呈すると内部のシンパから目をつけられるし、時にはメリー氏からの圧力にさらされてしまうのだ。ジャニーズ事務所は政治家や権力者との関係もあり、政府などから天下りで大物を招き入れていることもあり、ジャニーさんは某外国の機関との関係も噂されたほど圧倒的な権力を握っている。
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