「野球中華思想」を排す(下) スポーツ2023 その3
Japan In-depth / 2023年9月29日 11時0分
他のスポーツに目を向けても、世界一の卓球王国であることは日本でもよく知られているし、バドミントン人気も高い。
都市部では多くの人が、健康増進のためにと、朝の公園などで太極拳にいそしんでいることは、これまた日本でも知られているが、観戦スポーツとしての中国武術も、なかなかの人気であると聞く。
ヨーロッパにおいても、かつては野球などなきに等しいスポーツだと言われていたものが、最近では様変わりしてきているようだ。
たとえばサッカー大国イタリアだが、野球のプロリーグもあって、しかもサッカーと同じくセリエAと呼ばれている。所属チームも30を数え、大リーグ並みの規模だ。
とは言え、トーナメント方式に近いため年間の試合数は36でしかない。選手の平均年俸も邦貨にして50万円程度に留まるそうで、やはりこれでは、プロを名乗るのは無理があるのではないかと思える。とは言え今年初旬のWBCではベスト8に進出したほどで、実力はなかなか侮りがたい。
もうひとつのサッカー大国であるオランダだが、この国のリーグはアマチュアながら、WBCのランキングではキューバやベネズエラと7位を争っている。ちなみに日米の他、台湾、韓国、メキシコがベスト5だ。
元ヤクルトスワローズの選手で、2013年に最多本塁打(60本)を記録したウラジミール・バレンティンがオランダ国籍だが、当人はカリブ海のキュラソー島(オランダ領)というところで生まれ、16歳でシアトル・マリナーズとマイナー契約したという経歴の持ち主であるから、オランダ野球の底力の象徴と見なすのは無理があるだろう。
そもそもサッカーにおけるFIFAランキングと同様、野球の世界ランクというのも、基準がよく分からない。FIFAランキングについては後であらためて見よう。
面白いのはイングランドで、かの地ではクリケットが非常な人気を博している。
サッカーと人気を二分する……と言いたいところだが、本当はもう少し複雑な背景があって、伝統的に労働者階級はサッカー、中産階級はクリケットやラグビーを好む、ということになっているのである。
前に、日本の企業社会においては「直球勝負」とか「逆転ホームラン」といった野球用語がビジネスの場でも使われていると述べたが、イギリス英語ではルールを無視したやり方を「クリケットではない」と表現する。
クリケットのルールについて詳述する紙数はないが、最長2日間にわたるという、気の長いスポーツである。
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