中国恒大破綻に見る習近平政権の無策
Japan In-depth / 2023年10月6日 13時42分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国恒大集団、ニューヨークで破産法の適用を申請。
・「隠れ債務」を低金利コストの債券に変換できるようにする計画を開始。
・小手先の措置で終わる公算が大きいのではないだろうか。
今年(2023年)8月17日、中国恒大集団が、ニューヨークで米国破産法第15章に基づく破産法の適用を申請(a)した。米国破産法第15章は、企業が他の司法管轄区で再建策を講じる際、米国資産の保護を与えるものである。
仮に、近い将来、中国共産党政権が崩壊するとすれば、民間不動産業を“抑圧”するために設定された「3つのレッドライン」(b) (①総資産に対する負債比率が70%以下、②自己資本に対する負債比率が100%以下、③短期負債を上回る現金の保有) によるのではないだろうか。
ある意味、その画期的な出来事こそ、中央政府の財政破綻につながる恐れのある中国恒大の没落(c)であった。
1994年に始まった税分与制度で財政力の中央集中化と行政権の地方分散化が進んだ。そこで、地方政府は税収を確保するため、不動産業界への依存度を高めている。
さて、2021年9月、中国恒大のデフォルトが起きた際、中国当局は有効な対策を講じることができなかった。
当時、中国恒大の資産は2.3兆元(約46兆円)、負債は1.95億元(約39億円)、純資産は3500億元(約7兆円)、資産の大部分は沿海土地と深圳市旧市街地の改造プロジェクト等だった。
当局が流動性を担保したり、数社の大型公企業、AMC会社(資産管理公司<Asset Management Company>)が介入したりすれば、もしかすると、恒大は経営を安定することができたかもしれない。
習近平政権は「3つのレッドライン」のような市場の正常な機能を損なう行政上の制限を速やかに解除し、その危機が不動産業界全体と関連する川上・川下産業に影響を及ぼさないよう留意すべきだった。
しかし、北京はそうしなかったばかりか、「ゼロコロナ政策」や中ロの「上限なしの協力」を遂行し、国内外の政治と市場環境を悪化させている。
以前、習主席は「家は住むためのもので、投機のためのものではない」と提起(d)した。
中国恒大が危機に陥った際、北京は依然、その主張に固執し、痛みを伴わない「16の金融措置」(e)等の措置を導入した。このような生ぬる施策では、大手不動産開発業者の苦境を救済するのは困難だろう。
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