日本のサポーターよ、原点に戻れ(中)スポーツの秋2023 その5
Japan In-depth / 2023年10月6日 21時0分
自分でプレーするだけでなく、スタジアムにも観戦しに行った。
初めてスタジアムで見たのは、トッテナム・ホットスパーとリバプールとの試合で、学校で机を並べていたイスラエルからの留学生に誘われて、ロンドンの下町まで足を運んだ。当時はまだ、現在のホットスパー・スタジアム(2019年に開場)はなく、古めかしい建物だったのを覚えている。
試合は、たしかに素晴らしかった。2階席で見ていたのだが、みんな足も速ければ反応も素早い。当たりが激しい。結果は、2-1でトッテナム・ホットスパーの逆転勝ち。
問題は、試合が終わった後で、すぐに家路につくことはできなかった。
まずは、アウェイであるリバプールのサポーターたちが帰らされ、我々は1時間あまりも待って、別の入り口から帰らされたのである。それも、ゲートは警官隊(数百人はいたと思う)が固め、4列縦隊で進むよう命じられ、そこから左右を警官隊に挟まれたまま、駅まで行進させられたのである。
当時イングランドでは、フーリガニズムの問題がどんどん深刻になっていた。サッカーの試合の前後に、数人単位の殴り合いから、ひどい時には敵味方合わせて数千人がフィールド一杯に広がっての大乱闘まで、ともかく日常茶飯事であった。
そうした騒ぎの主体をフーリガンと呼ぶわけで、その語源については諸説あるものの、人名から来ているとする説が、もっとも広く信じられているようだ。
19世紀、ジャガイモの不作による飢饉に見舞われたアイルランドから、多くの移民がやってきてロンドンにも住み着いたが、差別と貧困に苦しめられた彼らの中から、一種の愚連隊が生まれ、地元の不良グループと抗争を繰り返すようになった。
そのアイルランド系不良グループの中に、パトリック・フーラハンという名うての暴れ者がいたという。彼の姓が「フーリガン」と訛って人口に膾炙し、そこから手の着けられない暴れっぷりを「フーリガニズム」と呼ぶようになったらしい。
ただ、それほど有名な人物であったにしては、生年月日など公的な資料はなにもなく(と言うことは、逮捕歴もないのだろう)、言わば伝説上の人物である。
実際に私は『ロングパス』(新潮社)という本を書いた際、わざわざ「フーリガン」と題して一章を割き、この問題を取り上げた。
元フーリガンとして有名な人物(自身の体験を本に著し、それが『デイリー・メール』紙で絶賛された)にもインタビューしている。
その本の後書きにも記させていただいたが、当時「本場の」フーリガニズムを目の当たりにした者としては、
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