中国の映画内容にミャンマー抗議〜自国の実情を貶める内容と抗議〜
Japan In-depth / 2023年10月6日 23時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ミャンマー、中国でヒット中の映画がミャンマーのイメージを損なうとして中国に抗議。
・持ちつ持たれつのミャンマー・中国関係ながら、中国映画への抗議は文化的側面が強い。
・「一か八の賭け」は凶とでるのか吉と出るのか、今後が注目。
ミャンマーの国営メディアは9月29日、中国が制作し中国国内でヒットを続けている映画の内容がミャンマーのイメージを損なっているとして中国側に抗議するとともに上映中止を求める事態になっている。
ミャンマーが槍玉にあげているのは中国映画「孤注一擲(英語タイトル・No More Bets)」で、映画の中では国名を特定しない東南アジアの国のある国に人身売買で連れてこられてオンライン詐欺に強制的に従事させられる中国人コンピュータープログラマーを描いている。
東南アジアの某国が舞台だが、中国人によるオンライン詐欺やネットカジノはミャンマー北東部に点在する中国資本の娯楽施設やホテルで実際に行われている犯罪で、ミャンマー軍事政権も中国治安当局もその存在を認知しており、中国側はミャンマー当局に摘発、関係する中国人の強制送還を求めている。
これに対しミャンマー軍政は最大の後ろ盾である中国への配慮から徹底的な摘発には乗り出すことを控え、時々象徴的な摘発を行い大々的に報道することで中国の要求に応じる姿勢をみせている。
こうした持ちつ持たれつのミャンマー・中国関係ながら、今回の中国映画への猛烈な軍政の抗議は政治経済軍事という関係とは異なる文化的側面が強いことを見極めて軍政は抗議という手段に訴えたものとみられている。
★中国では今年3番目のヒット作
映画「孤注一擲」は2023年8月に中国国内と海外で一斉に公開され、中国国内では今年3番目のヒット作となり、興行収入は公開6日間で15億元(約300億円)以上を記録し、最終的には38億元(約760億円)となっているという。
「孤注一擲」はニン・ハオ氏が制作し、シェン・アオ氏が脚本と監督を務めた作品で、主人公のコンピュータープログラマー藩(レイ・張芸興)とモデルの安娜(ジン・チェン・金晨)が海外からの高額の報酬という触れ込みの仕事を紹介され人身売買組織のルートで東南アジアの某国に連れていかれる。
そこでのネット詐欺で2人は大金を稼ぐもののネット詐欺のボスでマネージャーの陸(ワン・チュエンジュン)と阿才(スン・ヤン)によりネット詐欺から抜け出せない罠にはめられてしまい監禁されるという窮地となる。
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