現時点では考えにくい中国の台湾侵攻
Japan In-depth / 2023年10月26日 23時41分
第3に、目下、習主席はロケット部隊のトップを含め、軍の粛清を繰り返している。そのため、おそらく人民解放軍は主席の命令を聞かないだろう。実際、解放軍は「緩やかな連合体」にすぎない。トップの命令をすんなり受け入れて行動するとは考えにくい。
1989年「6・4天安門事件」が起きたが、その際、北京を防衛する38軍は鄧小平の命令に背き、動かなかったのである。市民や学生を掃射したのは27軍だった。
第4に、中国にも「ロシアのプリゴジン」になりそうな人物(張又侠か)が存在(f)し、習主席を裏切る可能性を排除できない。
第5に、10月19日、米国防総省が発表した『中国軍事力報告』の中で、人民解放軍の自己評価―(ⅰ)「5つの不能」、(ⅱ)「2つの格差」、(ⅲ)「2つの不足」等―を取り上げ、解放軍が自ら披露した致命的な弱点について触れている(g)。
(ⅰ)「5つの不能」とは、指揮官が(1)情勢を分析・判断できない、(2)上官の意図を理解できない、(3)戦闘の決心がつかない、(4)部隊を展開できない、(5)緊急事態に対処できない、である。
(ⅱ)「2つの格差」とは、(1)解放軍の現代化レベルと国家安全保障上の要求との格差、(2)解放軍と世界の先進的な軍事レベルとの格差、である。
(ⅲ)「2つの不足」とは、(1)現代戦争を戦う能力不足、(2)現代戦争を指揮するあらゆるレベルの幹部の能力不足、である。
加えて、解放軍はもう一つの大きなアキレス腱を持つ。1979年の中越戦争以来、本格的な実戦を行っておらず、実戦経験が著しく不足している点である。
以上から導かれる結論として、(将来については不明だが)現時点で中国が台湾へ侵攻する可能性は著しく低いと言っても過言ではないだろう。
〔注〕
(a)『中国瞭望』「路線闘争が激化、習近平は泣いて馬謖を切る」(2023年9月24日付)
(https://news.creaders.net/china/2023/09/24/2651536.html)
(b)『万維読者網』「このためか? 習近平は過去3ヶ月間頻繁に北京を離れている」(2023年10月11日付)
(https://m.creaders.net/news/page/1225099)
(c)『中国瞭望』「WSJ:中国における金融危機を排除できない」(2023年10月19日付)
(https://news.creaders.net/china/2023/10/19/2660139.html)
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