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米中関係はどうなるのか~トシ・ヨシハラ氏と語る その1 中国の日本への悪意の真の理由

Japan In-depth / 2023年10月30日 18時29分

 ヨシハラさんの研究者としての特徴は日系アメリカ人ながら台湾で育つという経歴のために中国語をマスターしている。その結果、中国側の政策論文や政府文書をも広範に読みこなし、習近平政権の意図や戦略についても踏み込んだ調査や研究をしている。そんな基盤からいまの中国の動向をどうみるかに強い関心を感じます。


 まず中国に関して日本にとっていま当面の最大課題となった福島の第一原子力発電所の処理水の海洋放出に対する中国側の糾弾を語らせてください。中国の日本非難は常軌を逸しています。この処理水は周知のように国際原子力機関(IAEA)からも汚染や害はないと証明されました。アメリカ側も当然、日本の措置の正当性を認めています。ところが中国だけはこの処理水を汚染水と断じて、日本からの水産物の全面禁輸という措置をとりました。中国は一体、なにを考えているのでしょうか」


 トシ・ヨシハラ 「中国のこの日本攻撃は日本へのすばらしい『贈り物』(ギフト)だと思いますよ(笑い)。いやまじめに考えても、今回の中国政府の態度ほど日本側の中国への警戒を健全な方向へ加速させる動きはないでしょう。中国による年来の日本の国益の侵害に対し、日本側の官民を結束させ、中国に反撃しようとする姿勢をほぼ決定的に強化させる、そんな効果をもたらしていると思います。


 この傾向は日本自身にとっても、アメリカにとっても好ましい動きです。だから中国のいまの理不尽な対日態度は結果として日本の利益、中国の損失だと思うのです。


 最近の中国は日本に対して不満を募らせていました。日本側の安全保障3文書による対中抑止の意図をこめた反撃能力の保持、防衛費の倍増などに中国は激しく反発しました。この8月の米日韓3国首脳によるキャンプデービッド合意も明らかに中国の軍事脅威への抑止の3国連携強化であり、これまた中国は非難しています。台湾有事への日本の関与姿勢も中国の忌み嫌うところです。このへんからの不満や怒りが今回の処理水糾弾の背後にあると思います。



写真)トシ・ヨシハラ氏


出典)Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA)


 しかし日本側の対中態度はこれまですでにかなり強固になっていたといえます。日本側の中国への警戒感、国防重視への世論の変化はなにが最大要因かというと、ここ10年ほどの中国の日本に対する攻勢的、高圧的な言動だと思います。


 ロシアのウクライナ侵略が日本の世論を変えた部分も大きいかも知れませんが、中国の膨張的態度への日本国民の反発の方がさらに大きな原因だと思います。その結果、日本側の安全保障観、ひいては世界観が変わったといえます。中国の処理水非難はまさにこの日本側の思考の変化をさらに推進する効果があると思います」


(その2につづく)


*この記事は雑誌「正論」2023年11月号に掲載されたトシ・ヨシハラ氏と古森義久氏の対談録「経済衰退しても中国は『軍事大国』」の転載です。


トップ写真:日米韓3か国首脳会談後会見に臨む、韓国のユン・ソクヨル大統領、ジョー・バイデン米国大統領、日本の岸田文雄首相 2023年8月18日 米国メリーランド州キャンプデービッド


出典:Photo by Chip Somodevilla/Getty Images


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