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グローバルサウスの盟主狙う バーラト(インド) 

Japan In-depth / 2023年11月2日 23時0分

 また、今回のサミットで象徴的だったのは、インドがグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の盟主への布石を打ったことだ。ロシアのウクライナ侵攻をめぐる参加国の対立で調整が難航していた首脳宣言をグローバルサウスが一丸となり、インドが採択に導いた。背景には、中国とロシアが主導するBRICSに軸足を移すことを阻止する狙いから、西側諸国が譲歩せざるを得ない状況にあった。


 インドは、元々中立外交の国で、その立役者はイギリスから独立後に初代首相を務めたジャワハルラル・ネルー首相だ。1940から50年代はネルー首相が、世界的に存在感を放ち、アジア、アフリカのスポークスマンを務めるほどだった。そして、米ソ間の争いに巻き込まれないよう非同盟政策を掲げ、冷戦時代に先駆的な役割をはたした人物でもある。


 実はネルーが15歳の時、ロシアがアジアの小国日本に敗れたことを知り、日本に尊敬の念を抱く。それは、政治家になっても続き、日本とは緊密な関係が続いた。当時日本の首相を務めた岸信介は日本政府として戦後最初のODA(政府開発援助)を実現させたいと考え、ネルーが受け入れた経緯もある。日本との親しい関係はモディ首相の代になっても続き、安倍晋三・元首相の国葬にモディ首相が参加したほどだ。


ネルー時代以降、徐々にインドの影が薄くなり、日本がアジアの中心となっていったが、近年は再びネルー時代のように台頭してきた。今後の動きを考える上でもネルー首相時代からのインドの動きは押さえておきたい歴史の一つだ。


 現在のインドの強みとして、昨年11月に中国を抜き世界最大の人口(14億2860万人)を有する国となったことがあげられる。国際通貨基金(IMF)は7月に2023年度(2023年4月─2024年3月)成長率見通しを6.1%に上方修正するほど、成長著しい国でもある。


 インドは今後も積極的な外交を繰り広げ、国際社会での存在感を強めて行くものと思われる。日本はインドとの関係においては、2014年に「戦略的グローバル・パートナーシップ」から「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げ。2016年には、「自由で開かれたインド太平洋戦略」という外交方針を打ち出し、2018年に対中戦略から「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に名称を変更した。さらに、日米豪とインドで構成される「日米豪印戦略対話(Quad)」を組み、合同軍事演習などを行っている。


 中国が台頭する今、アジア・太平洋地域の安定は、インドにかかってきたと言っても過言ではなくなってきた。日本がネルー時代から培ってきたインドとの絆をさらに強固なものにしていくことは、日本のみならず世界が安住できる施策の一つとなる。今、日本の覚悟が問われている。


 


トップ写真:G20首脳会議で、リシ・スナク英首相と2国間会談を行うインドのナレンドラ・モディ首相。(2023.9.9 インド・ニューデリー)


出典:Photo by Dan Kitwood/Getty Images


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