米中関係はどうなるのか~トシ・ヨシハラ氏と語る その5 中国の総合国力は弱くなる?
Japan In-depth / 2023年11月4日 17時0分
ヨシハラ 「そうした状況ではもうこれまでのような高度の経済成長は期待できない。中国の経済力全体が弱くなっていく。その結果、中国の総合国力も勢いを失っていく。こんな展望が考えられるわけです」
古森 「そうなると私たちが関心を向けるのはその経済面での衰えが中国の対外行動のパターンをどう変えるかです。普通の見方では経済が停滞し、国力が勢いを失えば、指導部は当然、その国内問題に精力と注意を多く向け、対外問題の推進が弱まるだろう、という感じですね。
この見方を支えるかにみえるのはごく最近の中国の対外攻勢の緩和です。中国はフィリピンがアメリカとの相互防衛の絆を拡大し、有事に米軍に使用を認める基地を5カ所か9カ所にほぼ倍増するという新合意を結ぶことに激しく反発しました。南シナ海で海軍艦艇がフィリピン側の船舶を乱暴な放水で脅すような行動までとりました。でもそれだけで終わりました。フィリピンのマルコス政権は当初の方針どおりにアメリカとの安保強化の合意を成立させました。この中国の態度は従来の強硬路線からの後退だとみられています。
アメリカ、日本、韓国が安保協力を強化することを決めたキャンプデービッド原則も中国にとっては後退だといえるでしょう。このところ中国は対外戦略面で守勢に回ったという印象もありますね。この状況は中国内部の混乱、とくに経済の衰退が原因だろうとする見方も明らかに存在します」
(その6最終回につづく。その1、その2、その3、その4)
*この記事は雑誌「正論」2023年11月号に掲載されたトシ・ヨシハラ氏と古森義久氏の対談録「経済衰退しても中国は『軍事大国』」の転載です。
トップ写真:南沙諸島で中国沿岸警備隊の船がアユンギン浅瀬の前哨基地への補給任務中のフィリピン沿岸警備隊の船を妨害し、放水砲を発射した事件を受けて、マニラの中国大使館前で抗議活動を行うフィリピン人ら(2023年8月11日 フィリピン・マニラ)出典:Photo by Jes Aznar/Getty Images
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