朝日新聞「論壇時評」の奇々怪々
Japan In-depth / 2023年11月16日 18時1分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・各主要新聞の論壇時評には奇妙な特徴がある。
・朝日新聞の論壇時評は、保守の月刊総合雑誌を決して取り上げない。
・ところが、朝日新聞論壇委員が選ぶ「今月の3点」に保守月刊誌の名前が載った。何か変化が起きたのか。
日本の雑誌ジャーナリズムはそれなりに日本の社会で貴重な役割を果たしてきた。国際問題や日本政治、社会問題、そして文化、文藝など日本国民にとって重要なテーマを新聞よりはずっと深く切り込んで、報道し、論評してきた。その主体は長年、月刊の総合雑誌だった。
その雑誌ジャーナリズムの業績としては文藝春秋の日本共産党研究や田中角栄論は大新聞の先を遥かに走っていた。そしてその大新聞は雑誌の報道や評論を後追いするかのように毎月、論壇時評というようなタイトルで総合雑誌の主要記事を紹介し、論評している。
「論壇時評」というその評論記事のタイトルは各新聞によってやや異なる場合もあるが、大方はそんな表現である。朝日新聞も読売新聞もまったく同じ論壇時評という題名である。産経新聞も同様だ。毎日新聞もときには論壇フォーラムという題名も使うが、大体は論壇時評だった。
さて各主要新聞の論壇時評には奇妙な特徴がある。奇妙というより偏狭といった方が正確かも知れない。この論断時評が幅広く総合雑誌を見渡して、優れた記事、核心を衝く論文を取りあげて評価すべきなのに、自紙の政治的なスタンスを前提とし、その政治傾向に沿った雑誌や論文しか取りあげないのである。このイデオロギー的偏向は朝日新聞がもっとも目立っていた。
朝日新聞の論壇時評はまずその評者の選択から偏向している。自分の新聞の反保守、反自民、左翼・社会主義傾斜という基調の学者や専門家にその時評を書かせるのだ。だから当の朝日新聞の左傾イデオロギーに合致した雑誌や論文だけを取りあげるのが常だった。具体的には岩波書店刊の雑誌「世界」の論文がいつも多い。一方、明らかに保守の月刊総合雑誌のWill やHanadaは決して取りあげない。
もっともこの二つの保守系総合雑誌は他の新聞、つまり読売、毎日、産経などでもその論断時評で言及されることがまったくといってよいほどなのだ。これは奇妙な現象である。Willも Hanadaも立派な総合雑誌である。部数もそれぞれ数万、あるいは10数万と、いまの総合雑誌全体のなかでは最大級だろう。その2誌に載る論文も勢いがよい。だが主要新聞は無視なのだ。一体、なぜなのだろうか。
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