「イスラエル・ロビー」とはなにか その1 アメリカでのロビーの権利
Japan In-depth / 2023年11月19日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「イスラエル・ロビー」とは、イスラエルの利益擁護を米政府や議会に一貫して要請し続ける政治組織。
・イスラエル支持勢力が現在の米政府や議会の中東政策、イスラエル政策に影響を及ぼしている。
・この勢力はこのロビーの権利、請願の権利に拠って立ち、米政府や議会に働きかけてきた。
イスラエルとイスラム過激派ハマスの戦闘にからんで「イスラエル・ロビー」という言葉がしきりに語られるようになった。ときには「ユダヤ・ロビー」とも評される。イスラエルにとっての最大支援者の、アメリカでのイスラエルを支持する政治勢力の呼称でもある。より正確にはイスラエルの利益擁護をアメリカの政府や議会に一貫して要請し続ける政治組織という意味である。
アメリカのイスラエル・ロビーは長年、アメリカの中東政策の形成に重要な役割を果たしてきた。ただしアメリカという国家、国民の間に広範なイスラエル支持はこのロビーだけの結果ではない。アメリカという国家本来の価値観のなかに、ユダヤ人の国家であるイスラエルへの強固な支持が存在してきた。だがその支援をアメリカの政府や議会の具体的なイスラエル支援の政策へと形成させる過程では、イスラエル・ロビーの役割は大きいのだ。
これからも激しさを増すイスラエルとハマスの戦闘、そしてその双方を支援する諸国、諸組織のせめぎあいは国際政治を大きく揺らがすことは確実である。その過程では超大国アメリカの動きが大きなカギとなる。そのアメリカの動向を左右する主要な一因としてなおアメリカ国内のイスラエル・ロビーが活動しているのだ。
そのイスラエル・ロビーに歴史的かつ立体的な光を当ててみよう。
私のワシントン報道もすでに通算40年ほどになる。日本の新聞特派員としての1970年代後半からのワシントンでの活動ではアメリカ外交の中枢部分にイスラエル政策が存在し、そのイスラエル政策はアメリカ国内のイスラエル・ロビーと呼ばれる勢力に影響されている実態を知るようになった。それ以後の長い年月、当のイスラエル・ロビーにも起伏や興亡があった。
1970年代に目立った強大な影響力は、2020年代のいまではかなり衰えたといえよう。だがその勢力自体はなお形を複雑にして健在である。そしてまちがいなくそのイスラエル支持勢力が現在のアメリカの政府や議会の中東政策、イスラエル政策に影響を及ぼしているのだ。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
【本誌独占インタビュー】トニー・ブレア英元首相が語る「中東和平への道」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 16時23分
-
「反移民」「反エリート」で共振するトランプ氏と欧州右派 国際秩序に打撃のリスク 「トランプ2.0」の衝撃③
産経ニュース / 2024年11月10日 16時0分
-
トランプ前大統領の圧勝とその教示
Japan In-depth / 2024年11月7日 23時21分
-
〈米大統領選〉アメリカのキャンパスで起きているトランプ氏を支持する保守派と、リベラルな政治団体の深刻な対立
集英社オンライン / 2024年11月6日 11時0分
-
投票日まであと1週間...米大統領選「5つの争点」を徹底解説 独自調査で見えた「最大の争点」は?
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 14時22分
ランキング
-
1神戸港沖合で貨物船と押し船衝突、押し船の3人投げ出され2人救助されるも1人死亡…1人不明
読売新聞 / 2024年11月24日 0時6分
-
2標津川で「流された」男児が死亡 通報から3時間後に下流で発見
毎日新聞 / 2024年11月23日 20時56分
-
3【物価高】年末年始のおせちにも影響か サケ不漁でことしはイクラが高い!? 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月23日 17時55分
-
4【裁判詳報】不可解な関係 20年にわたり売春の収入を”渡し続けた女”と”受け取り続けた女” 強盗致死事件 共謀はあったのか”渡し続けた女”が証言
RKB毎日放送 / 2024年11月23日 15時4分
-
5石破首相、日朝首脳会談に意欲「会いもせず非難しても始まらない」…家族会は「タイムリミットがある」
読売新聞 / 2024年11月23日 19時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください