外苑の樹木より問題なのは「公共性」~東京都長期ビジョンを読み解く!その103~
Japan In-depth / 2023年11月26日 23時0分
ポイントは2013年6月に東京都が「再開発等促進区」を設定してことがそもそもの発端である。容積率を緩和し、建物の最高高さを80メートルまで緩和してしまったのだ。審議会で議論されていたわけでもある。メディアも報道したところがあったが、ここまで話題にはならなかった。注目を浴びずに粛々と手続きを進めればOKだろと言うのは、あまりに民主主義的な手続きとしては稚拙である。
つまり問われるのは
・都市計画審議会にだれが選ばれたか?委員の選考プロセスは適正か?
・審議会でどういう議論がされたか?内容は多角的に検証されたか?
・どういう決定をされたか?
・パブリックコメントはきちんと機能したのか?(件数)
・パブリックコメントの意見はどの程度反映されたか?
・地域住民をはじめとして都民は納得しているか?
という点がしっかりできていないのなら、「公共性」が担保された手続きとは言えない。
■公共性問題その2:空間、景観、緑の保全
この連載で何度も言っているが、空間、景観、緑の保全など公共性の意味で問題をはらむ。高層ビルの乱立は
・今まで親しんでいた景観がなくなる
・見てきた風景を変える
・緑が減少・なくなる
・都市空間や守ってきた文化が大きくイメージチェンジしてしまう
といった公共財への影響がある。民間企業はそれなりに空間を売って儲けられる。一部の人は新たな開発でメリットを感じられるだろう。しかし、その他の人たちにとっては、親しんでいた「風景」が大きく変わる。民間の開発とはいえ大きく地域社会を変えてしまうわけで、感情的にも納得いかない人もいるだろう。さらに、住民だけでなく、働く人もいるし、利害関係者は多い。全ての人が納得してもらうというのは現実的に不可能だったとしても、できる限り、きちんと説明し、説得、メディアにも説明する活動とそのプロセスは怠るべきではないだろう。
■公共性についての議論こそ必要
長年、外苑前で働いていたものだが、当時、個人的に関心をもって問題提起などしていた。しかし、東京五輪前には注目を浴びることは皆無であった。今回、樹木の伐採で注目を浴びたわけだが、東京の再開発自体の必要性も問われていくべきだろう。とはいえ、再開発にもメリットもある。今回は体育施設建設の税金がかからないというメリットがあったわけだから、これは選挙の「争点」としても都民的議論をしていくべきことだろう。そこはメディアに期待したい。
個人的には、説得と調整を繰り返してきた民間ディベロッパーの立場もわかるし、これまでの都や行政側の苦労もわかる。なのでどちらの立場でもないが、ここまで議論になった以上、ケリをつけるためには納得のいく住民投票、最低でもアンケート調査なども必要ではないだろうか。
トップ写真:神宮外苑 空撮
出典:airyuhi/a.collectionRF/GettyImages
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