日本への最大脅威の中国海軍とは(上)アメリカの新刊書が立体的な光を
Japan In-depth / 2023年12月1日 17時23分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・日本の安全保障にとって最大の脅威は中国人民解放軍、特に海軍。
・いまや世界最大の海軍であり、艦艇総数では長年の海の覇者米海軍を上回る
・米中対立の契機となった中国側の軍事動向の先兵が中国海軍だった。
日本の安全保障にとって最大の脅威、そして最大の懸念の対象は中国人民解放軍だといえよう。とくにその中国の強大な軍隊のなかでも海軍の動きがもっとも気になる。中国海軍こそが日本への具体的な脅威をはっきりとみせつけているからだ。日本固有の領土の尖閣諸島への中国側の海軍力での攻勢をみれば、その実態はすぐわかる。
その中国人民解放軍海軍の実態に立体的な光を当てた本がアメリカで書かれ、その日本語版が日本でもこの12月冒頭に発売となった。日本の安全への危機が顕著となるこの時期、知っておくべき有益な資料である。「毛沢東の兵、海へ行く」(扶桑社)という日本語版タイトルの書である。筆者はアメリカの中国海軍研究では第一人者と目されるトシ・ヨシハラ氏だった。
▲写真 トシ・ヨシハラ氏 出典:Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA)
中国海軍の特徴を改めて報告しながら、この本の骨子を紹介しよう。日本の安全保障にも巨大な影響を及ぼす課題だからだ。
中国人民解放軍海軍はいまや世界最大の海軍である。多様な艦艇の総数では長年の海の覇者とされてきたアメリカ海軍を上回る。アメリカ側の国防総省の最近の報告でも、中国海軍の軍用艦艇の総数は370隻、アメリカ海軍の294隻をはるかに越える。
ただし海軍の実際のパワーはもちろん艦艇の数では決まらない。各艦の持つ火力など性能による。その性能ではアメリカ海軍がなお世界一ではあるが、中国海軍の増強のペースがすさまじい。2030年には艦艇総数440を越え、その構成も航空母艦、潜水艦、ミサイル駆逐艦などの主力を大増強して、アメリカ海軍を圧倒しかねない展望なのである。
この新刊書「毛沢東の兵、海へ行く」はその中国海軍の生い立ちと特徴について詳述している。著者の日系アメリカ人学者トシ・ヨシハラ氏はこの書によって中国人民解放軍海軍の出自や発展のプロセス、さらにはその基本戦略を知ることは、日本の安全保障にとっても貴重な指針を得ることになる、と述べている。なお私も中国の軍事動向を長年、追ってきたという立場から依頼されて、この書の解説を書いた。
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