ネットの闇はいつ晴れる(下)こんな日本に誰がした 最終回
Japan In-depth / 2023年12月4日 7時0分
今のようなネット社会ではなかったが、マスメディアが彼を犯人扱いしたことから、大変な報道被害があったと聞く。『週刊新潮』など、この人のプライバシーを事細かに暴き、あろうことか「謎の多い不気味な家系」とまで書いた。
これで編集長の首が飛んだとか、そういった話は聞かれなかったのだから、たしかにわが国には「報道の自由」があるのだろう……いや、笑いごとではない。
しかも、現地で取材に当たっていた記者の間からは、
「どうも、あの人が犯人だとは思えない」
という声も聞かれていたというのだから、ますますひどい話である。にもかかわらず前述のようなトーンの報道になったのは、
「野郎に年越し蕎麦は食わせない(年内に自白させ立件してみせる、という意味)」
という捜査本部の意気込みだけが、記者クラブを通じて伝播していたからである。
結果論ではあるが、農薬の調合を間違えたくらいであれほどの惨事が起き得るか、基礎的な科学知識さえ備えていなかった長野県警の捜査員は「真面目なアホ」で、そのように杜撰な捜査に疑問を呈することもなかったマスメディアは「善意の迷惑系」であったと言える。
真面目な話、日本のマスメディアを堕落させた元凶は、
「昔大本営、今記者クラブ」
であると、私は前々から公言しているのだが、お仕着せの情報ばかり垂れ流して「抜け駆け」を忌避するような気風を育てておきながら、自分たちは一流ジャーナリストである、という態度。これだから「マスゴミ」とまで言われるのだ。
前述の弁護士による問題提起に対して、半分だけ同意すると私が考える理由も、ここまで読まれた向きには、ご理解いただけるのではないだろうか。
マスメディアの内部に「報道の自由」をはき違えた輩がいることは事実だが、それを言うなら「表現の自由」をはき違えた者がネットにはあふれている。
マスメディアであれネットであれ、やってよいことと悪いことは峻別されなければならない。それ以上でも以下でもないのだ。
したがって今後の課題としては、マスメディアとネットは「相互監視」のような関係性になって行けばよいと思う。
そういう健全な情報社会を築くためには、一人一人がメディア・リテラシーを育んで行かねばならない。リテラシーとは「読み書きできること」を意味するラテン語から来ているので、本来は基礎的な供用の一部なのだ。
次回のシリーズでは、年末年始にオススメできる、書籍、映画、それに動画サイトなどを紹介して行く。乞うご期待。
トップ写真:イメージ(本文とは関係ありません)出典:Taiyou Nomachi/GettyImages
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