「イスラエル・ロビー」とはなにか その4 反対議員への集中攻撃
Japan In-depth / 2023年12月6日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・イスラエル・ロビーの力の発揮の実例、「上院議員76人の書簡」。
・上院外交委員会委員長チャールズ・パ―シー議員への強烈なイスラエル・ロビーの圧力。
・イスラエル・ロビーが猛烈な反対運動をぶつける対象に党派の区別はなかった。
前回はイスラエル・ロビーの伝説的な力の発揮の実例として「上院議員76人の書簡」について報告した。1975年5月のアメリカ連邦議会での出来事だった。時のフォード政権が第四次中東戦争の処理をめぐって、イスラエルへの全面支援を停止するような動きをみせたことへのイスラエル・ロビーの猛反発だった。
アメリカ国内のイスラエル・ロビーに象徴されるイスラエル支持勢力はイスラエルへのほぼ無条件の支援を求める上院議員の同意の書簡にまず19人の賛同を集めた。そしてその後の3週間ほどで、その数を76人にまで増やしたのだ。76人といえば総数100人のアメリカ連邦議会上院の4分の3という圧倒的多数である。
アメリカ国内のイスラエル・ロビーはこの成果をどんな方法で達成したのか。
民主党のジョン・カルバー上院議員は当初、この書簡には明白に反対していた。カルバー議員は「イスラエルの全面支援をうたうそんな書簡はアメリカ政府の中東政策での手足を縛ることになるから、私は絶対に署名しない」とまで言明していたのだ。ところが同議員はすぐにその書簡に署名してしまった。
「圧力があまりに強かったため、屈服してしまった」
カルバー議員は率直にこんな感想を述べていた。そして深夜に自宅あて電話がひっきりなしに
かかってきて、この書簡でのイスラエル全面支援に同意することを執拗に促す圧力があったことをもらしていた。
アメリカの連邦議会にはこの種のロビー活動には決して負けないという定評のある議員も存在した。民主党重鎮のダニエル・イノウエ上院議員もその1人だった。だが同議員もまた当初の方針を逆転させて、この書簡に同意してしまった。
「たった1通の書簡にサインするほうが5000通もの書簡に悩まされるより、ずっとましだ」
イノウエ議員もこんな言葉を口にしていた。支援者、有権者からの手紙が殺到し、みなイスラエル支援のその書簡に賛成することをイノウエ議員にも強く求めていたのだ。
チャールズ・パ―シー上院議員へのイスラエル・ロビーの圧力はさらにものすごかった。パーシー議員は共和党で、しかも当時の上院外交委員会の委員長だった。だが「上院議員76人の書簡」には断固として反対した。そしてイスラエルの態度をあまりに非妥協的だとして非難した。そのうえでイスラエルを批判する独自の抗議声明を作成して、時のフォード大統領に突きつけたのだ。また公開の場で中東和平についてイスラエルの態度を頑迷にすぎるとして糾弾する言明をも繰り返していた。
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