今冬のインフルエンザシーズンに向けて、ワクチンでしっかり予防しよう
Japan In-depth / 2023年12月7日 23時12分
濱木珠恵(医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック新宿院長)
【まとめ】
・2022年米国では、新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルス感染症が流行した。
・日本でもこのままインフルの流行が拡大し、昨冬の米国や今冬の中国のようになるかもしれない。
・受験生など、人生の大きなイベントが控えている人には追加接種をお勧めしたい。
先日、高校三年生になる知人の娘さんが、今シーズン2回目のインフルエンザワクチンを接種するために来院した。インフルエンザの流行が収束しないことを心配した父親が、旧知の医師に相談したところ、「受験生なら、今年は2回接種しておいた方が無難だ」と勧められたためだ。私も、その考えに賛成だ。
我が国では、12才以下の小児が2回、13歳以上で1回接種が推奨されている。彼女は、すでに10月に接種を終えていた。なぜ、追加接種が必要なのだろうか。それは、4年にわたるコロナパンデミックで、多くの感染症に対する免疫力が低下しているためだ。
その象徴が、最近の中国での感染症の流行だ。11月末、中国で北京などの北部を中心に肺炎が集団発生したという報道があった。「中国で原因不明の呼吸器疾患」といわれると、またも未知の感染症が発生したかと懸念されるむきもあるかもしれないが、実際には既知の病原体による感染症が原因だ。
北京市内の「法定伝染病」患者報告数は11月中に急激に増加しているが、増えているのは現在は季節性インフルエンザだという(参照1)。中国では今年5月以降マイコプラズマが流行し、10月以降インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルスなどの小児感染症が流行している。これは2019年末のパンデミック以来、久しぶりにCOVID−19の感染対策が解除された影響と考えられ、決して予想外の事態ではない(参照2)。
すでに新型コロナへの制限措置を緩和していたほかの国でも同様のことが起こっている。2022年の米国では各地で、新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルス感染症が流行し、病院は重症化した小児や高齢者で占拠された。このことは「トリプルデミック」と呼ばれ、米国メディアが大きく報じた。
インフルエンザは、季節はずれの10月頃から増加し、11月のインフルエンザによる入院患者数は2010年以来の最多を記録した。2020年、2021年にはほとんど発生しなかった小児のインフルエンザ関連死亡は、コロナ前と同様のレベルまで増えた(参照3)。2023年も同様の傾向があり、米国疾病対策センター(CDC)によると、今年も全米ではインフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルスによる呼吸器疾患が流行しているという(参照4)。各種の感染症の増加は、パンデミックの感染対策緩和後にありがちな現象のようだ。
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