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34年ぶりの国連憲章第99条発動とガザ戦争

Japan In-depth / 2023年12月9日 11時0分

34年ぶりの国連憲章第99条発動とガザ戦争


植木安弘(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)


「植木安弘のグローバルイシュー考察」





【まとめ】


・グテーレス国連事務総長は、安保理にガザ地区への人道的停戦を宣言するよう促した。


・国連の人道支援体制はもはや機能していない状況。


・イスラエルは戦闘に勝っても戦略的に負ける。


 


12月6日、グテーレス国連事務総長は安保理に宛てた書簡で就任以来初めて国連憲章第99条に言及し、イスラエルとハマスの戦争でガザ地区への人道支援体制が崩壊の危機に瀕しており、これが地域の国際平和と安全保障に重大な危険な状況をもたらしているとして、安保理に人道的停戦を宣言するよう促した。


 国連憲章第99条は、国際平和と安全保障を脅かすと思われる状況について事務総長が安保理の注意を喚起する、つまり対応を促す権限を事務総長に与えており、これが事務総長の政治的役割の法的根拠になっている。この条項は、事務総長が安保理に直接行動を動かすものであるため、その発動はこれまで極めて慎重に扱われてきた。歴史的にこれまで5回しか発動されていない。


1949年の朝鮮戦争勃発時や1960年のコンゴ動乱、1971年のバングラデシュ独立を巡るインドとパキスタンの対立、1979年の米国外交官の人質事件、それに1989年のレバノン危機の時だった。今回は34年ぶりの発動となる。それだけ、グテーレス事務総長の危機感が強かったことがわかる。


 10月7日のハマスによるイスラエル攻撃で1200人規模のイスラエル人が殺害され、200人以上のイスラエル人や外国籍の人達が人質となった。その後のイスラエルのガザ攻撃で、6日間の人道休戦はあったものの戦闘は再開し、これまでパレスチナ側の民間人に17,000人以上の死者が出ており、その中で女性が4000人以上、子供が7000人以上と言われている。


種子島とほぼ同じで東京都23区の約6割と言われる狭い面積に220万人のパレスチナ人がおり、そのうち170万人が避難民となっていると言われている。パレスチナ人の難民支援のためのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の現地職員も130人がこれまでに死亡しており、これまでの記録となっている。


 事務総長の書簡を受け12月8日に安保理は緊急会合を開催し、UAE(アラブ首長国連邦)が提案し90か国以上が共同提案国となった決議案は、即時の人道休戦や人質全員の解放、ガザ地区への人道アクセス、民間人の保護を要求するものだったが、米国の拒否権で葬られた。英国だけが棄権し、日本を含む13か国が賛成票を投じた。米国は、ハマスへの非難が含まれていない上に、無条件の停戦はハマスが同じような行動を取ることを許すものであり危険だとした。


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