「イスラエル・ロビー」とはなにか その5 フルブライト議員への攻撃
Japan In-depth / 2023年12月11日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ウィリアム・フルブライト議員、1974年の上院議員選挙で敗北。
・イスラエル・ロビー、対抗候補に全米から支援を投入。
・イスラエル・ロビーが米政治に大きな影響力を有していた時代があった。
フルブライトという名前は日本でも広く知られてきた。「フルブライト奨学金」でよく知られた名前であり、言葉である。この奨学金は日本では長い歳月、多数の若者たちにアメリカでの高等の教育を受けさせ、研究を進める機会を与えてきた。この奨学金の創設の中心となったのはウィリアム・フルブライト上院議員だった。
民主党所属、アーカンソー州選出のフルブライト氏は戦前の1940年代から連邦議会の下院議員となり、まもなく上院に転じた。上院では長い年月、活躍し、イスラエル・ロビーの動きが顕著となる1970年代には上院の外交委員長として議会全体の重鎮とされる立場にあった。フルブライト議員はその上院での活動の期間に世界各国からアメリカへの留学生を招く奨学金制度の創設を果たしたのだった。
アメリカ国内のイスラエル支持勢力はこのフルブライト議員とも激突した。同議員はアメリカ歴代政権の長年にわたるイスラエル政府への巨額の軍事援助支出に反対してきた。とくに上院外交委員長としてのフルブライト氏の政治的な動きは重みがあった。アメリカ国内でイスラエルを無条件に支援する勢力にとっては彼は大きな敵だったわけだ。
そのフルブライト議員が1974年の上院議員選挙で敗北した。地元のアーカンソー州では長年、圧倒的な強さを発揮してきたのだが、この年の選挙では強力な対抗馬が出て、僅差とはいえ敗退した。その対抗候補に全米からの支援を投入したのがイスラエル支持勢力、イスラエル・ロビーだった。イスラエル支持の政策に反対する政治家に対してはこの種の露骨な政治闘争によって落選を図るというのがその勢力の戦法となっていたのだ。
イスラエル支援に反対する議員たちにはどこまでも攻撃の手をゆるめず、選挙区にまで踏みこんで、粘り強い追い撃ちをかけるのがイスラエル・ロビーの年来のやり方だったのである。
フルブライト議員は落選の直前の1973年、以下のような発言をして、波紋を広げていた。
「アメリカ議会上院にはイスラエルが欲するもののためには、なんにでも投票する議員が定員100人のうち70人から80人も存在する」
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