派閥解体が最善策 問われる岸田首相の決意
Japan In-depth / 2023年12月15日 13時9分
だが国民の信頼が失墜したという点では、リクルート事件と十分に肩を並べるものだろう。実際に、12月11日に公表されたNHKの世論調査では、内閣支持率は前回比6ポイント減の23%で、自民党の政党支持率に至っては、8.2ポイント減の29.5%となっている。
12月14日に公表された時事通信の世論調査では、内閣支持率は17.1%と、とうとう20%を割ってしまった。しかもその凋落ぶりは、およそとどまる様子はない。
12月13日に開かれた国会会期末の記者会見では、岸田文雄首相の表情は非常に硬く、発言した際に涙ぐんでいるようにも見えた。なお岸田首相は6日前に会長を務めていた宏池会を離脱した時、まるで“禊”をすませたようなすっきりした表情だったが、ようやく問題の深刻さを痛感したのかもしれない。実はひたひたと危機が迫っている。
ひとつは当初は5つの派閥の中で最も「裏金」が少ないと思われていた宏池会だったが、その金額が急激に増えていたことだろう。前述の産経新聞の調査によれば、宏池会の「裏金」の金額は1億6000万円で、1億3000万円の平成研よりも多かった。また資金の還流に関与したとみられる議員の数は15人から26人で、派閥の3割から5割を占めている。
もうひとつは、清和会のメンバーを大臣や党の要職から一掃するのはいいとして、その代わりがなかなか見つからないことだ。全く新たなメンバーを閣内に入れるのはリスクが高い。スキャンダルが発覚すれば、岸田政権の命運はそれで尽きてしまいかねない。
たとえば浜田靖一前防衛大臣は、官房長官を打診されたが断り、外務副大臣を打診された阿達雅志元首相補佐官も、「体力がもたない」と就任を固辞。いずれも本音は「貧乏くじを引きたくない」ということだが、岸田首相の求心力の低下に直結する。
岸田首相はやむなく、宏池会の座長を務める林芳正前外務大臣を官房長官に起用したが、こうした背景から鑑みると、「信頼できる側近を官邸の要に置いた」というわけではないことは推測できる。
岸田首相としては一刻も早くこの問題を解決し、下降し続ける内閣支持率を反転させ、政権の安定を図りたいところだが、その前途は非常に難しい。というのも、岸田首相自身が解決方法として「しっかり調査」「事実を確認」「丁寧に説明」を繰り返すのみで、それで国民が納得できるのかという視点がないからだ。そもそも今回の問題の原因は何なのか。派閥という組織が「裏金作りマシーン」と化し、一部の議員の利権の巣窟になっていたからではないのか。
ならば根本原因を取り除くために派閥を解体することこそが、国民の納得を得られる最善策ではないのか。それにはまず、岸田首相自身が会長を務めていた宏池会を解体した上で、他の派閥にも解消を求めていくべきではないか―。
13日の総理会見で、筆者はそう質問したが、果たして岸田首相に伝わったかどうか……。永田町の空気が変わったとしても、岸田首相の「鈍感力」は変わらないのかもしれない。
トップ写真:東京の首相官邸で記者会見する岸田文雄首相(2023年12月13日 首相官邸)出典:Photo by Franck Robichon - Pool/Getty Images
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