経済悪化で習政権窮地へ 【2024年を占う!】国際・中国内政
Japan In-depth / 2023年12月17日 11時2分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・習政権は集団的指導制から離れ、すでに個人独裁制へ。不確実性増し予測困難。
・習派と「反習派」の熾烈な党内闘争が行われ、習主席の部下らも紛争避けられず。
・2024年も経済悪化歯止めかからず、党内分裂で習政権の終焉を見る
かもしれない。
俗に「来年の事を言えば、鬼が笑う」と言われる。特に、中国のような独裁制国家の予測は難しい。1982年以降、中国共産党内では、一応、ルールができ上っていた(a)。そのルールに従って、党内が機能していれば、一定の予測が可能だった。
ところが、習近平政権は、(「権威主義体制」的な)集団的指導制から遠く離れ、すでに個人独裁制へ移行している。そのため、不確実性が増し、予測が困難となっている。
だが、本稿では、敢えて来年の中国政治を展望する。
周知の如く、秦剛前外相と李尚福前国防部長が相次いで失脚(b)した。習主席の肝煎りで2人は抜擢された。だが、理由は不明である(しばしば「腐敗」や「重大な規律違反」というレッテルは、習政権が誰かを恣意的に失脚させるための口実に過ぎない)。
ひょっとして、2人ともロケット部隊の中国ミサイル施設の漏洩問題に関与したかもしれない(ちなみに、李玉超ロケット部隊司令官の米国留学中の息子がリークしたと言われる)。更に、「秦前外相はすでに亡くなっている」という説まで登場(c)した。北京の301病院の中で、自殺したか、拷問に遭って死んだという。
一方、李克強前首相が"変死"を遂げた(d)。元老達が目論んだ「李上習下」を習主席が恐れ、機先を制し、李前首相を殺害した可能性を排除できないとの報道も(e)。
それに対し、元老&「紅二代」である劉源と王岐山の反撃が開始された。
李前首相の葬儀直前、11月1日、劉少奇の息子、劉源は個人独裁を批判する「民主集中制を確立・堅持し、組織・制度構築を強化する」と題する記事を『毛沢東思想研究』というウェブサイトと機関誌へ投稿(f)した。
劉源は民主集中制(党内民主主義)の原則を強調し、少数は多数決に従うべきだと強調した。これが、「反習派」の「紅二代」による習主席への攻撃の嚆矢となった。
一方、11月6日、王岐山は自らが牛耳る『財新』で、次のような社説(g)を掲げた。
今日、中国の経済と社会が直面する課題に対して、人々は「改革・開放」の新たな大躍進を期待し、将来の中国に新たな改革の配当を生み出すことを待望している。「長江と黄河は逆流しない」(李克強の言葉)という改革は駅伝のようなもので、バトンからバトンへと受け継がれる必要がある。
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