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若者たちが福島をハブに世界へ飛躍する 坪倉研の使命

Japan In-depth / 2023年12月28日 0時0分

先輩による指導は医師に限った話ではない。弁護士や会計士などの士業も、若手は先輩の指導のもと、仕事を通じてスキルを磨く。このような組織は、通常、パートナー制で運営され、若手はパートナーの部下となる。





大学医局が弁護士や会計士と違うのは、大学病院という直轄の巨大な現業を抱えていることだ。私が懸念するのは、大学病院の生産性が低く、その存在が若手の成長の機会を奪っていることだ。





東大病院の場合、令和3年度の附属病院収益は537億円だ。短時間有期雇用職員を含み1,689人(歯科医、研修医を含む)が働いている。一人あたりの売上は3,179万円にすぎない。





これでは病院経営はやっていけない。赤字を補助金などで穴埋めしてきたが、昨今の財政事情を考えれば、いつまでも続けられない。そうなれば、人件費を抑制しなければならない。





その1つが後期研修医制度だ。東大病院の1年次の後期研修医(専攻研修医)の時給 1807円で、1週間の勤務が31時間内の非常勤雇用だ。





後期研修医は、20代後半から30代前半で、最も働ける時期だ。市中病院に勤務すれば、常勤で年収は1000万円以上、非常勤で時給は1万円以上は稼げる。





この仕組みの問題は、厚労省が後押しする形で、日本内科学会や外科学会の連合体である一般社団法人日本専門医機構が仕切り、実質的に義務化されていることだ。この仕組みを通じ、東大病院は若手医師を安くこき使っていると見なすことも可能だ。ブラック企業といっても決して過言ではない。





これは東大病院に限った話ではない。大学病院の経営は、どこも似たり寄ったりだ。本来、スクラップ・アンド・ビルドしなければ大学病院の体制を温存し、若手医師にブラック労働を強いている。これでは人材は育成されない。ツケを払わされるのは次世代だ。





若手医師を育てるには資金が必要だ。多くの大学病院に、その力はない。どうすればいいのか。医師育成を考えれば、医局と大学病院を切り離すべきだ。原理的には可能だ。大学附属病院は医学生や医師教育に必須ではない。その証左に米国のハーバード大学には附属病院はない。





また、そちらの方が社会の需要に応えることができる。それは、社会情勢の変化とともに、若手医師が修業するに相応しい医療機関も変わりつつあるからだ。高齢化が進むわが国では、従来型の高度医療の需要が減り、プライマリケアの重要性が増している。厚労省の「医療施設調査」によれば、2000年代に入り、年平均5%増加していた手術数が、2017年の調査では2.1%増にペースを緩め、2020年には減少に転じた一方、後期高齢者は激増している。後者の領域に飛び込むことが、医師として成長するための近道だ。





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