安倍派の危機から考える 創設者・福田赳夫元首相の政治理念
Japan In-depth / 2023年12月29日 23時0分
福田赳夫元首相は「角福戦争」を熾烈に争った田中角栄元首相とは対照的な人物で、両親の厳しい躾により自分の功績を誇示することを好まなかった。さらに、博学で文化に造詣が深く、人情味にあふれ、先見性を持ち合わせた人物だった。
また、経済、政策についてはブレーンを必要としないほどの政策通でもあった。田中内閣時代の1973年10月の第1次石油危機に直面すると政敵の田中氏は列島改造論を撤回し、福田氏に経済問題を一任すると懇願。福田氏はこれを受け大蔵大臣に就任し、この難局を見事に乗り切った。その後の首相就任後も経済政策に意欲的に取り組み、日本を世界有数の経済成長国に押し上げている。2年という短い在任期間ながら、物価を安定させ、日本経済を立て直す功績を遺した。
1972 年には外務大臣として「国際交流基金」を創設し、日本と世界、特に東南アジアとの文化的な結びつきを強化。さらに、1977(昭和52)年には東南アジア歴訪中に東南アジア外交3原則「福田ドクトリン」を打ち出した。「福田ドクトリン」や福田氏の外交努力は、日本とアセアンの関係を劇的に改善させ、良好な関係を築いた。この取り組みは後継の康夫氏に引き継がれ、現在も康夫氏が精力的に東南アジアや中国を訪問している。これらの功績は、もっと多くの人に知られても良いのではないかと思っている。
▲写真 西ドイツのヘルムート・シュミット首相と福田赳夫首相(1978年10月11日首相公邸)出典:Bettmann/Getty Images
首相退任後、「OBサミット(インターアクション・カウンシル)」の活動に熱心に取り組み、ドイツのシュミット元首相とともに人口問題、環境問題など世界の様々な課題で提言していった。今年8月に出版された「OBサミットの真実 : 福田赳夫とヘルムート・シュミットは何を願っていたのか」(ダイヤモンド社)には、その内容が詳しく書かれている。
この本によると、福田赳夫元首相とシュミット元首相は知識人で、私欲なく世界の平和を常に願う人柄だった。互いの家を訪ねるなど深い友情で結ばれていたようだ。両者は真面目に物事を考え、文化に造詣が深く、人間性に富んでおり、共通点が多く、親密な関係が築かれたことは不思議ではないのだが、現役中はそこまで親密な様子がなかっただけに、意外な内容だった。シュミット元首相は福田赳夫元首相のお墓参りのため、群馬を訪れているほどの仲だったようだ。
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