稚拙な不祥事会見は今年も増える【2024年を占う!】危機管理
Japan In-depth / 2024年1月1日 11時0分
旧ジャニーズ事務所の1回目の会見にも同様のことが言える。ジャニー喜多川氏による性加害の被害者に対する救済スキームがまだ出来ていないうちに会見を開いた。当然だが、それに関する質問が出てもゼロ回答になった。結果、炎上だ。
これも会見の目的と開くタイミングを間違えた例だ。救済スキームが固まった時点で会見すればあのような会見にはならなかったろう。質問への回答の準備も不十分だった。ゴルフ愛好家である宏行氏にすれば、気の利いたことをいったつもりだったかもしれないが、むしろ社会の顰蹙を買ったのはいうまでもない。
宝塚歌劇団のいじめ自殺疑惑の会見でも、出席した木場健之理事長らはいじめ・パワハラ疑惑を全否定した。一方で、遺族側が主張している「ヘアアイロンいじめ」について、井塲睦之理事・制作部長は報告書を読み上げるなか、「ヘアアイロンを故意に額に押し付けるなどのいじめがあったのか」の項目で、「ヘアアイロンで火傷をすることは劇団内では日常的にあること」とした。これは筆者も会見を見ていて違和感があった。
そもそもヘアアイロンは高温になるもので自分が髪を巻くためのもの。普通、怖くて他人に自分の髪をヘアアイロンで巻いてもらおうとは思わないだろう。もし他人の髪にヘアアイロンをあてるなら相手の皮膚にアイロンが触れないよう細心の注意を払うはずで、日常的に火傷が発生する、などとする報告書で世間が納得すると思った時点でアウトだ。
この質問が出ることは当然事前にわかっており、この報告書をOKした幹部らの感覚はずれているといわざるを得ない。もし、危機管理コンサルタントが入っていたなら、他の回答を用意していたはずだ。明らかに準備不足だ。
なぜ、このように目的が不明確なまま会見を開いたり、想定問答が不十分なまま会見に臨んだりしてしまうのだろうか。
答えは簡単だ。自分たちの組織以外の第三者を入れて事前に対策を取っていないからだ。
不祥事会見の前に第三者を入れねばならない理由は明確だ。自分たちの論理だけで押し通そうとしても、かえってそれが社会との軋轢を生むことにつながることが多いからだ。自分たちの組織の論理は決して世間一般のそれと同じではない。むしろ乖離していることの方が多いのだ。
第三者の目で、自分たちの論理を検証してもらうことが、会見前の準備として極めて重要だ。
日大アメフト部薬物問題の会見でも同様のことが言える。明らかに準備不足で炎上している。1番最初の会見で澤田康広副学長(当時)が説明した一連の経緯がかえって事実を隠蔽しようとしていた、という疑惑を招くことになってしまった。そして、あとからあとから新真実が発覚し、最初の会見はなんのためのものだったのかわからなくなってしまった。こちらも目的を明確にしないまま会見に臨んだ例だ。
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