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鮎川義介物語⑩「満州に移住してもいい」鮎川の本気度

Japan In-depth / 2024年1月13日 11時0分

「日本では日産自動車と豊田自動車が競争しているが、どっちがいいと思いますか」





「鮎川さん率いる日産がいいと思います」。





星野は岸のアドバイスを受けて鮎川に面談することにしました。





実は、星野は、今のポストへの就任直後の11年11月に鮎川と面談していました。陸軍は日本の財界人を満州に招待したのです。そこには、元鈴木商店番頭の金子直吉、日本窒素創業者の野口遵、三井物産筆頭常務の安川雄之助らそうそうたる財界人が名を連ね、鮎川も参加していたのです。





財界人グループは満洲各地を視察し、最終的には新京で、陸軍や満洲国の高官らと意見交換しました。財界人の中で特別印象深かったのは鮎川でした。





鮎川は「日本の外貨不足を補うため、満州ではもっと金の生産を増やし、輸出に回すべきだ」と強調。「満洲国の経済開発に30億ドルの投資が必要で、そのうち半分はアメリカとヨーロッパ、とくにアメリカからの出資が必要だ。日本だけのお金では満州を開発できない。技術的にも無理だ」と大演説し、ふと一言漏らしたのです。





「それに、アメリカの出資を受ければ、日米開戦は避けられる」。





満洲の工業化は日本にとって最も重要なテーマでした。ただ、それに突き進めば、アメリカとの衝突の危険は高まります。回避する秘策としての日米共同開発。鮎川はそんな大胆な手法をいとも簡単に説明したのです。





そこに、鮎川の緻密な計算と大胆な事業計画が見えました。星野はこの時以来、鮎川を尊敬していたのです。





(その⑪につづく。①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧、⑨)





トップ写真:日本が植民地化していた頃の満州・大連の様子。大連・ヤマトホテルの屋上から見た大連広場の眺め(撮影日不明)出典:Photo by George Rinhart/Corbis via Getty Images




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