ボストン・ウェルネス通信 その2 人気の痩せ薬、驚くほどたくさんの人が治療を中止する理由
Japan In-depth / 2024年1月12日 17時0分
ところで、薬の治療期間が長くなるほど体重は減りましたが、研究参加者の55%(チルゼパチドに55.7%、セマグルチド54.4%)が研究期間中に治療を中止しています。研究者らは、「望ましい減量を達成した患者は、治療を継続する可能性が高い。一方、 体重の変化が認められない患者は、治療を中止・変更する可能性が高い」「試験期間中に薬が不足し、入手が困難であったのかもしれない」と述べています。
●驚くほどたくさんの人が治療を中止
前述の報告だけでなく、ロイターによると、保険会社のデータの分析からは、減量目的で痩せ薬を始めた患者さんは、1年後も継続しているのは3人に1人未満であることが判明しました(3)。
減量目的で痩せ薬を利用している人が、治療を中止する理由として、「薬が効かないと勘違いして治療をやめてしまう」ことも考えられています。実は、「痩せ薬が長期に効果がある」と期待している人がたくさんいます。ただし、痩せ薬で永遠に体重が減り続けて、痩せ細って、ついに姿が消えてしまう・・・何ていうことはありえません。そもそも食事療法、フィットネスや肥満手術など減量の方法に関係なく、そのうち体重はプラトー、つまり頭打ちの状態になります。セマグルチドやチルゼパチドも、薬の投与開始後、急速に体重が減るものの、プラトーに達します。
2022年の「ネイチャー メディシン」の、アラバマ大学バーミンガム校栄養科学部W・ティモシー・ガーベイ博士らの報告によると、セマグルチドを服用している人は、投薬開始から約60週間後に体重減少がプラトーに達しました(4)。
なぜプラトーになるのかは不明ですが、「飢餓状態から身を守るために体重を保持しようとする」「急激に体重を減らすと代謝が遅くなる」「カロリーを燃焼しにくくすることで体がエネルギーを節約する」「薬への耐性が高まる。体重を減らし続けるために、より多くの用量が必要になる」などが考えられています。
ただし、治療をやめてしまうと、体重は元に戻ります。さらに、薬でコントロールされている糖尿病や高血圧が悪化します。2022年の英リバプール大学ジョン・P・H・ワイルディング博士らの報告では、68 週間のセマグルチド治療中に、平均 17.3%体重が減りましたが、治療を中止してから1年後、平均して体重減少の3分の2が元に戻りました。血圧と血糖値も治療前のレベルに戻り始めました(5)。
●ウェイトサイクリングで、新たな病気のリスクが高まる
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