トランプ嫌悪症を排する時
Japan In-depth / 2024年1月23日 12時0分
アメリカの民主党寄り陣営には、年来、トランプ氏に対する激しい嫌悪症が定着してきた。その症状はいまやトランプ氏が再度、大統領になりかねない展望が現実性を増したために、トランプ恐怖症という反応へと変質しつつある。ここであえて「症」という表現を使うのは、この種の態度には党派性やイデオロギー性の反発からの偏見、さらには感情の高まりから事実誤認という「病んだ」部分も多いからだ。
この症状はアメリカの主要メディアでは民主党びいきが顕著なニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなどが示してきた。その具体的な事例は私自身、ワシントンを長年、拠点とする考察者としていやというほど目撃してきた。その考察はトランプ氏が2015年にアメリカの国政舞台に初登場して以来の一貫した米側のトランプ報道ウォッチに基づいている。そのゆがんだトランプ報道は実際の政治の場での民主党勢力と一体となった場合が多かった。つまり民主党側のメディア・政党連合体ともいえるのだった。
そんな報道の最大例はトランプ政権登場時からCNNなどが全面展開した「ロシア疑惑」キャンペーンだった。「2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営はロシア政府と共謀してアメリカ有権者の票を不正に動かした」とする糾弾である。だが長期間の捜査や調査の結果、この糾弾には根拠はなく、民主党側の策謀が発端だったことが判明した。なんのロシアとの「共謀」も「票の不正な操作」もなかったのである。
民主党傾斜メディアのこうした姿勢の背後にはトランプ氏への激しい嫌悪が存在する。憎悪と呼んでもおかしくはない。「こんな人物がアメリカ合衆国の大統領になることなど、決して許されない」という確信のような断定である。トランプ氏の人間性、価値観、経歴、実際の言動などのすべてを排除したいという激情だともいえる。選挙ではない方法を使ってでもトランプ氏を放逐しようという意図だともいえる。
だがこうした民主党側のトランプ氏への嫌悪にまったく同意しない国民も多いという現実がアイオワ州で立証されたわけだ。もちろん民主党側のこの嫌悪や憎悪が消えるわけではない。だがトランプ人気のこの時点での高まりは民主党側の嫌悪に同意する層が減ってきたとはいえるかもしれない。その真実を示すのがこれからの各州での予備選の投票であり、究極は11月5日の最終投票である。
この種のトランプ氏への嫌悪は最近は恐怖症へと変質したともいえる。主要メディアはトランプ氏がもし大統領に再選されれば、独裁、報復など非民主的な統治になる、という「予測」を流し始めたからだ。その原因となったトランプ氏の草の根での人気の高まりはオハイオ州で証明されたといえる。
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