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トランプ嫌悪症を排する時

Japan In-depth / 2024年1月23日 12時0分

そうした「恐怖」宣伝の具体例は「トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)から離脱する」という警告である。この警告もニューヨーク・タイムズや同じ陣営のNPR(全米公共放送)が報じた。だがその内容はトランプ氏がかつてNATOの西欧側のドイツなどがオバマ政権時代からの「防衛費は最低GDP(国内総生産)の2%とする」との公約を守らないことへの非難の範囲での非公式発言の捻じ曲げ引用だった。欧州側がどうしても公約負担の増加に応じないならば、アメリカは有事に欧州を守らないこともある、という警告を文脈を無視して切り取り、「アメリカのNATO離脱」という骨子へと仕立てていた。





だが現実にはトランプ大統領はその任期の4年間、NATOとの絆を堅持した。2017年から毎年、発表した国家安全保障戦略でNATO堅持を一貫して明記した。それどころかトランプ政権は2018年までにはNATO加盟国のバルト3国の対ロシア抑止力強化策として「増強前方展開」の4戦闘集団の新派遣に参加した。NATOからの離脱ではなく、NATOの強化の実効策をとっていたのだ。





日本側としてもこの種の民主党傾斜メディアのゆがめ報道には十二分に注意すべきである。日本の主要メディアやアメリカ通とされる識者の多くがこの「トランプ次期大統領NATO離脱説」を事実であるかのように伝え始めたのだ。同盟国アメリカの政治の行方は日本の国のあり方をも左右する。その実際の展開にはあくまで客観的かつ複眼的な考察により、現実を正確につかんでおくことが欠かせないのだ。日本側でもこの自明な認識をアイオワ州での投票の始まりを機に銘記しておくべきだろう。





*この記事は日本戦略研究フォーラムの論壇サイトへの古森義久氏の寄稿の転載です。





トップ写真:党員集会ナイト・イベントで演説するトランプ前大統領(2024年1月15日 アイオワ州デモイン)出典:Photo by Chip Somodevilla/Getty Images




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