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バイデン政権の対外政策の欠陥とは その1 大統領の軍事忌避

Japan In-depth / 2024年1月24日 18時0分

では、バイデン政権の対外政策はトランプ政権とどう違うかというと、一口で評すれば「力の軽視」です。軍事力でバランスをとることが嫌い、もう軍事忌避と呼んでもよい傾向だと思います。





そうした傾向は国防費の数字をみれば一目瞭然です。トランプ政権は国防費を前年比十数%で増やし続けて史上最大の防衛支出を続けました。しかしバイデン政権は前年と同程度の国防費の額はなんとか保っていますが、インフレ率を引いたら実質的には削減になっています。





兵器開発の面でも軍事忌避は明らかです。一番象徴的なのは、トランプ時代に決めた海洋発射型中距離核巡航ミサイル(sea-launched nuclear cruise missile)の開発を中止したことです。中国は中距離ミサイルを1000数百基持っているのに、アメリカはかつてロシアと中距離核全廃条約を結んでいたため(2019年に破棄通告)、アメリカの地上配備の中距離核ミサイルはゼロだった。そこでトランプ政権は中国に対する抑止力として潜水艦発射の中距離核巡航ミサイル開発しようとしたのですが、バイデン政権はそれを中止してしまったのです。





政策面でもバイデン大統領は軍事を避けている傾向が強いといえます。2年前の2月、ロシアがウクライナ国境周辺に部隊を集結させ、侵略の観測が高まってきた段階で、本来なら強硬に警告すべきところがバイデン大統領はアメリカは軍事的には対応しないと先に言明してしまいました。これはアメリカの歴代政権の伝統ともまったく異なる安全保障に対するきわめて偏った感覚を示しています。





軍事的に対応するとあえて明言する必要はありませんでした。しかし侵略を試みる側にとっては超大国のアメリカがもしかすると軍事的な反撃や制裁に出るかもしれない、という疑念こそが最大の抑止となるのです。だから軍事的な対応については曖昧にしておくべきだったのに、最初から軍事対応はしないと述べて、ロシア側に事実上の青信号をみせてしまったのです。





そうしたバイデン政権の軍事に対する軽視や忌避がまずあって、ロシアや中国などの反米勢力はそこに生まれた力の空白に進出してきている。言い換えると、いまのアメリカのあり方が世界の混乱や危機と呼べるような状況を引き起こしていると思うのです。





(その2につづく)





*この記事は月刊雑誌「明日への選択」2024年1月号のインタビュー記事の転載です。





トップ写真:ジョー・バイデン米大統領(2024年1月22日 ホワイト・ハウス)出典:Photo by Kevin Dietsch/Getty Images




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