麻薬犯罪組織との戦いが激化 ‟内戦状態”のエクアドル
Japan In-depth / 2024年1月26日 9時20分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・エクアドルでは麻薬絡みの犯罪が続発、ノボア新大統領は犯罪組織と「戦争状態にある」と非常事態を宣言。
・エクアドルの治安悪化の原因としてメキシコの2大麻薬カルテルなどの進出が挙げられる。
・任期が短く、政権の安定運営に不安があるノボア大統領は早くも正念場に。
■殺人、誘拐、爆弾事件が頻発
エクアドルは過去数年、麻薬がらみの凶悪犯罪がはびこり、治安が悪化していたが、今年に入ってからの状況はこれまでにないほど劣悪だ。1月7日、エクアドル最大の麻薬犯罪組織のボスが刑務所から脱獄したのをきっかけに国内各地で殺人、誘拐、爆弾事件が相次ぎ、少なくとも6つの刑務所で暴動が起きた。武装集団が生放送中のテレビ局スタジオを占拠する事件も発生。昨年11月末に就任したばかりのノボア大統領は全土に60日間の非常事態を宣言、主要都市に夜間外出禁止令を出し、本格的な壊滅作戦に着手した。
大統領はエクアドル全土で犯罪組織との「戦争状態にある」と述べ、これら犯罪組織に“宣戦布告”した。これに対し、犯罪組織側は徹底抗戦の構えを見せており、今月17日にはテレビ局占拠事件の捜査を担当していた検事が最大の商業都市グアヤキルで白昼、犯罪組織によって射殺される事件も起きた。「エクアドルは内戦状態に突入したと言っても過言ではない」(首都キトの有力紙「エル・コメルシオ」の記者)との声も聞かれる。エクアドルでの10万人当たりの殺人件数は過去数年で急増、2022年には26.2件に達し、昨年1年間では2倍に増えたとするデータもある。
■メキシコの2大麻薬組織が参入
エクアドルで麻薬関連犯罪が横行するようになった背景には外国から麻薬組織が入り込んだという事情がある。エクアドルはコカインの生産国ではなく、国境を接するペルーやコロンビアのコカインが運ばれる密輸中継地。グアヤキルなどのエクアドルの太平洋岸の港から北米や欧州向けにコカインが運び出されている。以前はコロンビア最大のゲリラ組織だった「コロンビア革命軍」(FAR)がエクアドルのコカイン密輸を牛耳っていたが、2016年にFARCがコロンビア政府と和平協定を結び、合法政党となり、麻薬密輸業からほぼ撤退。FARCの影響力が減少したのに乗じてメキシコの2大麻薬カルテルがエクアドルの麻薬ビジネスに参入、地元の4つの麻薬密輸組織と結託して勢力を拡大するようになったといわれる。
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