イラン指導部、対米攻撃を選択する可能性も
Japan In-depth / 2024年2月7日 11時16分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#05
2024年1月29日-2月4日
【まとめ】
・米軍基地への無人機攻撃で兵士3人が死亡、ガザでの紛争が湾岸地域にも波及しかねず、極めて重大。
・米・イランともに、両国間の直接戦闘を望んではいない。
・親イラン武装勢力の動き次第では、イラン指導部が対米攻撃を選択する可能性はゼロでない。
(編集部注:米軍は2024年2月2日、イラクとシリア領内にある親イラン武装組織の拠点に対し、報復措置としての空爆を行った)
今週は中東情勢から始めたい。先週筆者は「イランは米軍との直接戦闘は望んでいないだろうが、逆に言えば、直接戦闘の手前まで対米『代理戦争』を続けるだろう」と書いた。ところが、先週末、正に筆者が恐れていたことがシリア・ヨルダン国境付近で起きてしまった。
各種報道によれば、1月28日未明、ヨルダンのシリア国境付近にある米軍の前線基地宿舎が無人機攻撃を受け、兵士3人が死亡、40人以上が負傷したという。昨年10月7日以降、中東で米兵が死亡したのは初めてだ。元々同基地は米軍のシリア国内での対ISIS作戦の最重要拠点の一つであったといわれる。
親イラン民兵組織がシリア側から攻撃を仕掛けた可能性が高いと報じられたが、イランが直接関与した証拠は今のところない。その意味では、イランは今も米軍との直接戦闘を望んでいない可能性は高いだろう。しかし、この出来事は、ガザでの紛争が(ペルシャ)湾岸地域にも波及しかねないという点で、極めて重大な事件である。
こうした事件が起きてしまった以上、米国は必ず報復措置をとるだろう。問題はそれに対するイランの反応である。筆者は今も、米・イランともに、両国間の直接戦闘を望んではいないと考える。しかし、親イラン武装勢力の動き次第では、偶発的または結果的に、イランの指導部が対米攻撃を選択する可能性はゼロでないだろう。
もう一つ、中東関係で気になることがあった。最近、あるユダヤ系米国人の友人から真顔で、「日本のパレスチナ報道は『反ユダヤ主義』的だと」指摘されたからだ。「ガザに関する日本での報道はイスラエルに厳しい」ので、日本のメディアは「反ユダヤ主義」だというのだ。おいおい、ちょっと待ってほしい。
「アンチセミティズム」の本質は日本では殆ど理解されていない。筆者に言わせれば、Anti-Semitismとは、同一の「絶対神」を信仰しながら、別の「預言者」と通じた契約を重視するユダヤ教とキリスト教・イスラム教との間の政治的確執である。
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