なぜ逃げ切りを許したのか(上)失敗から学ぶことは多い その1
Japan In-depth / 2024年2月8日 17時3分
桐島容疑者には逮捕歴がなく、警察に指紋などのデータもなかったため、親族からDNAの提出を受け、照合を急ぐこととなったが、29日朝、当人は他界。2月になってから、前出の鑑定により「親族関係に矛盾はない=まず間違いなく本人である」と確認されたため、5日には家宅捜索が行われ、今後は被疑者死亡のまま書類送検されることになる見込みだ。
すでに、大手メディアによって連日報じられたことだが、東アジア反日武装戦線というのは、1974年8月から75年5月にかけて、世に言う連続企業爆破事件を引き起こした組織である。
発端となったのは1974年8月30日に、東京・丸の内の三菱重工ビル(現・丸の内2丁目ビル)の玄関付近に仕掛けられた時限爆弾による事件で、死者8人、重軽傷者376人という大惨事となった。
彼ら東アジア反日武装戦線は、その名の通り、日本国家とゼネコンなど大企業がアジア諸国を侵略・搾取しているとの理論を掲げ、爆弾闘争を展開したもので、総勢10名ほどながら「狼」「大地の牙」「さそり」の3班に分かれて活動しており、桐島聡容疑者は「さそり」の一員であった。
当時、過激派と称される新左翼諸派がまだまだ勢力を保っていたが、彼ら東アジア反日武装戦線の過激さは突出したものであった。なにしろ逮捕された場合は黙秘ではなく服毒自殺することまで申し合わせていたほどで、実際にメンバーの中に薬剤師がおり、職場から盗み出してきた青酸カリを持ち歩いていた。ただ、本当に死ねたのは斉藤和ただ一人である。
今さらながらだが、事件当初この人物の姓名は「さいとう・やわら」と報じられていたが、戸籍名は「のどか」であるらしい。
桐島聡容疑者は事件当時、明治学院大学法学部の4年生で、前述のように逮捕歴はなく、警察もノーマークだったと伝えられるが、1975年5月19日に主要メンバー7人が一斉検挙され、その中の一人が彼の部屋の鍵を所持していたことから、捜査線上に浮上した。公安当局は、組織の一端は早い段階から把握していたが、尾行や張り込みを続け、ほぼ全容をつかんだ、と判断した時点で一斉検挙に踏み切ったとされている。
おそらくはニュース速報で、仲間が一網打尽にされたことを知った桐島は、翌20日、渋谷区内の銀行で現金をおろしたまま消息を絶つ。
彼の顔写真を印刷した指名手配のポスターは700万枚も印刷され、交番など全国至る所に張り出されていたが、ご案内の通り、以降49年間、その行方はつかめなかった。
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