NYで爆増する無賃乗車、そのわけ
Japan In-depth / 2024年2月18日 21時14分
「新保釈制度」施行にはもっともらしい理由をつけているが、現実にNYでは拘置所や、刑務所がもう溢れかえってどうしようもない、という現場の実態が背景にあるのは周知の事実で、ニューヨーク市民は実に冷ややかな目で見ている。
勾留する人数をできるだけ減らそう。
地下鉄無賃乗車で逮捕などをしなくなった理由にはこのような背景があるし、マリファナ解禁に関しても背景には同じような理由がある、と私は思っている。
今まで「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」を実践することによって犯罪率を下げることを重視してきたニューヨーク市であるが、現在はこのように、ブレーキを踏みながらアクセルを吹かしている、とも言える状態だ。
「割れ窓理論」とは軽微な犯罪を、軽微だから、と見逃すと、多くは関心を払っていない、というサインとなり、より大きな犯罪を誘発する、という理論だ。軽微な犯罪を取り締まることが結果、大きな犯罪を誘発するのを防ぐことに繋がる、と言うもので、ニューヨーク市は古くは1980年代に、積極的には1990年代、その対策にずっと力を入れてきた。
90年代に、元検事であった当時のジュリアーニ市長は「割れ窓理論」を用いて軽犯罪(落書きなども含む)を徹底的に取り締まることにより、最悪だったNY市の治安を半減させ、全米平均より安全な都市にさせた、と言われる。
大人も近づくのに躊躇する最悪の治安だったタイムズスクエアを「夜も家族が訪れることが出来る場所に」とジュリアーニ氏は宣言、以来、こんにちでは、世界中から観光客が押し寄せ、家族連れで、ディズニーランドのように賑わう場所となったのは事実である(が、私自身は、ジュリアーニ市長だけの功績でなく、経済が好転してきた結果が大きいと思っている)。
以来、四半世紀経った現在。
引き続き「割れ窓理論」を実践してきているNY市ではあるが「保釈金改革法」のお陰で取り締まりが結果「ザル」状態になっている。
「なにをやっても、結果保釈される」という認識が、違法行為に手を染める人々の心理的ハードルを押し下げており、結果「犯罪」に「手を染める」人の人数を増やしている。
地下鉄の無賃乗車などは、もう犯罪、という認識が著しく低い。
▲写真 筆者が地下鉄の改札で1時間観察している間、数十人の人々が改札を飛び越え、くぐりぬけて行った(筆者提供)
爆発的に増えた無賃乗車による地下鉄の被害額は、2022年には6億9,000万ドルといい、現在のレートで言えば円に換算すると1,000億円以上で、当局も黙って見過ごすわけにはいかず、地下鉄(MTA、メトロポリタン交通局)と警察は、民間の警備員を雇うなどもしてここのところ取り締まりに力を入れているが、警官への残業代、警備員への支払い費用などがばかにならならず、その費用対効果はまったく割に合わない。
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