「危機管理マニュアル」その4 不祥事会見の基本③質問への答え方
Japan In-depth / 2024年2月21日 18時48分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・不祥事会見には想定質問を事前に準備することが重要。
・まず、結論を先に言おう。
・そして、否定すべきことは明確に否定すること。
「危機管理マニュアル」
その1 社会という名の法廷
その2 不祥事会見の基本①会見の目的
その3 不祥事会見の基本②進行について
その4 不祥事会見の基本③質問への答え方
その5 平時に備えておくべきこと
前回は、会見の進行と、司会の重要性について書いた。
今回は、「質問への答え方」について。
不祥事会見を見ていて毎回目につくのは「準備不足」だ。想定問答が十分に用意されていないな、と感じる。
想定問答がなぜ必要かは、その2の「会見の目的」に通じる。何のためにその会見を行うのか、そこが明確でないと、当然、答える内容もブレるのだ。記者の質問ひとつひとつになんとか答えようとするからどうしても無理が出てくる。場合によっては言ってはいけない一言を言ってしまうかもしれないし、仮に言わなくても雰囲気でバレてしまうこともある。
特にテレビカメラが入る場合、会見者の一挙手一投足が映像で白日の元にさらされる。話さなくても表情や仕草で視聴者はその人となりを知ることになる。人は見かけが9割と誰かが言ったが、まさにその通りだと思う。
■ 答えは事前に準備
会見ではどんな弾(タマ)が飛んでくるかわからない。なので、一つ一つにまともに答えていたらきりがない。
日本人はアメリカ人のようにプレゼンテーションに慣れていない。質問に真摯に答えようとしがちだが、時にそれが誤解に通じたり、失言になったりする。不祥事会見では、それは避けねばならない。
ではどうしたらいいか。
こちらの答えを事前に準備しておくことだ。そしてそこから逸脱しないことが重要だ。
例を挙げよう。
不祥事会見で記者が必ずと言ってもいいほど聞くのが「進退問題」だ。マスコミの世界では、社長を辞任に追い込むことを「首を取る」というが、トップに責任を取らせることを手柄と考えている節がある。
なので、不祥事会見では必ずと言っていいほどどこかの社が、
記者「社長、こんな問題を起こして、どう責任を取るんですか?職を辞する気持ちはあるのですか?」
などとやる。
こちらはそれどころではない。辞める気なんてさらさらない。そんな時、こうした質問にはどう答えるか?
会見者「いまは、原因究明と防止策の策定に真摯に取り組む所存です。私の進退についてはそのあと考えます」。
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