裏金システムの全貌を明らかにするためには森喜朗元首相の参考人招致が必要
Japan In-depth / 2024年3月1日 16時0分
安積明子(政治ジャーナリスト)
「安積明子の永田町通信」
【まとめ】
・内閣支持率、いったん底打ちしたかに見えたが、2月再度下がり始めた。
・岸田首相は、パーティー券をめぐる裏金作りのシステムが、いつ誰によって始められたのか明らかにしなければならない。
・少なくとも森喜朗元首相の参考人招致が必須になる。
戦後の日本を支えてきた自民党が、崩壊しつつあるのかもしれない。政権与党としての責任が全く感じられないからだ。派閥のパーティー券裏金問題をめぐって開かれた衆議院政治倫理審査会では、安倍派の幹部らの「逃げ」が目立った。
「政治とカネ」問題は、自民党にとっての永遠の課題に違いない。約50年前にはロッキード事件が発覚し、約30年前にはリクルート事件、約20年前には日歯連闇献金事件が発生した。そして一昨年にしんぶん赤旗が第一報を報じた安倍派のパーティー券裏金疑惑は、昨年12月に大きな問題に発展。今年1月には池田佳隆衆議院議員とその政策秘書が逮捕され、3000万円以上の還付金を受けた谷川弥一衆議院議員と大野泰正参議院議員は、それぞれ秘書とともに立件された(谷川氏は議員辞職)。
岸田文雄首相は党内に政治刷新本部を設置し、自ら本部長に就任した。また自民党は関係議員から聴き取り調査を行い、時効にかからない過去5年分の還付金の金額を明らかにするとともに、過去3年分の政治資金収支報告書を修正させた。しかしいつ誰がこの仕組みを始めたのかが明らかにされず、根本的な解決に至っていない。
ただ、2022年7月に奈良県で凶弾に倒れた安倍晋三元首相がキックバックの中止を決定したものの、還付金を求める声が強かったために後に再開されたという事実は判明している。その経緯を知るのは安倍派の歴代の事務総長や「5人衆」と呼ばれる幹部たちだが、「原則非公開」という政倫審のルールを逆手にとって、塩谷立元文科相、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長は出席を渋った。そしていったん部分公開が決まった西村康稔前経産相や二階派の武田良太事務総長の政倫審出席まで取りやめにしてしまったのだ。
これに最も焦ったのは、岸田首相に違いない。昨年から下降が止まらなかった内閣支持率は、今年1月にはいったん底打ちしたかに見えたが、2月には再度下がり始めた。4月28日の衆院補選は、自民党候補が決まっている島根1区で事前の予想に反して苦戦が伝わっており、長崎3区は不戦敗となりそうだ。さらに東京15区でも候補者選定が難航。下手すりゃ、全敗になりかねず、これでは政権はもちそうにない。それでも9月の総裁選で再選を果たそうとするならば、求心力を強める必要がある。にもかかわらず、岸田首相の前途には良い材料は全くない。
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