NHK、4月から午後にワイドショー 民放は戦々恐々
Japan In-depth / 2024年3月3日 11時13分
今回の放送法改正案では、受信料を払っている世帯がネットで視聴しても追加負担を求めないが、ネット配信だけ望む人からは新たな受信契約を求める事が盛り込まれた。つまり、NHKプラスをネットで視聴する契約者が増えればそれだけ新たな受信料収入が見込めるわけで、地上波に頼りっきりだった収入構造をネットが支える仕組みが出来るわけだ。午後の時間帯を生放送にするにはそうした背景があると思われる。
さて、迎え撃つ民放はどうか?正直、脅威に感じてはいるだろう。NHKのインターネット活用業務の予算は、2024年度で195億円と巨額だ。NHKは本部をのぞき全国に53、世界に29の取材拠点がある。コンテンツ制作力は民放とは比較にならない。とにかくマンパワーが桁違いにすごいのだ。国内だけでなく海外から豊富なニュースを放送することが可能だ。
少し脱線するが、元民放記者だった筆者の経験から話すと、とにかくNHKは現場に人が多い。民放の記者が1人でやるところを、5人も6人も人が来る。
2000年にアメリカの大統領選を取材していたときのこと。ブッシュ(ジュニア)候補とゴア候補がそれぞれの得票数を巡り、訴訟合戦を繰り広げていた時、世界中のメディアが、フロリダ州の最高裁がある州都タラハシーに集結した。
フジテレビや他の民放は大抵記者一人(プラス現地支局の米人スタッフ2~3名)で切り盛りしていたが、NHKは中継車を自前で手配(民放は予算がかかるので回線を他の米テレビ局などから時間単位で買い取る)しただけでなく、最高裁判所の正面入り口脇に、テントを設営し、机から椅子から運び込んで取材基地を設営した。当然何人もの記者やカメラマン、ディレクターらが常駐するのに十分な広さのモノだった。その金の使い方を見て、正直苦笑してしまった。
それはさておき、豊富な取材力は民放にとって脅威である事は間違いない。自然災害や大事件、大事故などの場合、NHKのネットワークは存分にその威力を発揮するだろう。
一方で、3時間もの間、民放のワイドショーから視聴者を奪い取れるかは疑問だ。午後の時間帯は「ミヤネ屋」(日本テレビ系)や「ゴゴスマ」(TBS系)などの強敵が並ぶ。いまでいえば、お笑い芸人の松本人志氏のスキャンダルなどで大いに盛り上がっているが、NHKはこれまでこの問題には一切触れていない。ほのぼのとした紀行ものや、献立などで3時間生放送枠を埋めるのは困難だ。かといって国会ニュースの深掘りを延々とやっても、視聴者はついてこない。民放の夕方のニュースが芸能情報やグルメなどをふんだんに入れ込んでワイドショー化しているのは、そうしないと視聴者が見てくれないからに他ならない。NHKの制作陣は、「えげつない話題を避けつつ視聴率を取る」という不可能に近い命題に直面することになる。
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