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ODA70周年を機に対中供与の大失態の反省を その5(最終回) 日本の首を絞める中国軍事力に寄与

Japan In-depth / 2024年3月30日 11時0分

貴州省を含むこの地域は前述のように軍事産業地帯であり、兵器製造だけでなく核兵器開発のためのプルトニウム再処理施設やロケット発射場が存在した。そのエネルギー源となる発電所には特別の軍事的な重要性があったわけである。





日本のODAが中国軍の軍事能力を直接に高めた、という話を私は台湾の李登輝総統から直接に告げられたことがある。これはこの連載でも簡単に前述した。





1997年12月、当時の中華民国総統だった李氏に台北でインタビューしたときだった。日本のODAが中国の人民解放軍の台湾攻撃能力を増強させたという苦情だった。





「日本政府は福建省の鉄道建設へのODA供与だけはやめてほしい。福建省の鉄道網強化はミサイルや軍隊の移動を円滑かつスピーディーにして、台湾への攻撃能力を高めるからだ」





中国軍は台湾に近い福建省内に部隊とミサイル群を多数、配備していた。いざという際の台湾攻撃のための集中的な配備だった。日本政府は1993年に福建省の鉄道建設に67億円の援助を出していた。鉄道は軍隊の緊急の移動には不可欠の手段である。





中国側が台湾への武力攻撃の可能性をも宣言しながら、実際にその攻撃を実行できる部隊や兵器を集結して緊迫を高める地域で鉄道を強化することに軍事的な効果があるのは、あまりにも明白だろう。そんな鉄道網の強化は中国の軍事能力への直接の貢献といえよう。





だが日本の外務省は対中ODAの成果として中国内部の鉄道の40パーセントをも電化したことを誇らしげに宣伝していたのだ。





鉄道に軍事性があることはだれにでもわかる。とくに歴史上、内陸での戦闘が多かった中国では軍隊と鉄道というのは切っても切れないつながりがある。





1979年に中国がベトナムへ大部隊を侵攻させたとき、人民解放軍が合計50万もの将兵を国内各地の基地から鉄道によって南西端の雲南省までどう移動させたか。





1989年の天安門事件で北京の民主運動参加者たちを弾圧する人民解放軍を他の各地から鉄道でどう運んだか。





この実態を詳しく調査し、研究した米軍の専門家たちに北京やワシントンで詳細な事情を聞いたことがあった。私の脳裏にはそのころから中国での鉄道の持つ軍事性については一定の認識があった。





だから日本政府がODA資金を中国の鉄道建設に投入することのリスクは私自身は以前から理解していたつもりだった。





中国では鉄道は核兵器の配備や防御にも決定的に重要な役割を果たしている、という趣旨の研究報告書がアメリカ側で公表されたこともある。





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